短編小説はふだんほとんど読みません。
結末がすっきりせず、「あとは自分で考えて~」って放り出されるようで、モヤモヤ感が残ることが多くて。

「なにかが首のまわりに」も、ほとんどのストーリーの終わり方はすっきりしないのですが、余韻が残り、「このあと主人公はどうなったのだろう」っていうモヤモヤ感というか想像がひろがる感じが、私にとっては意外なことなのですがとても良かったです。


 アチェベの「崩れゆく絆」を読んだ時もそうだったのですが、これまで全く知らなかった人々の暮らしや価値観を知り、「新しい扉を開けたなあ」って気持ちになりました(自分の読書傾向ならまず手に取らない本に触れられる。これぞ猫町の醍醐味かと)。「アフリカ人」と一言で言っても、ナイジェリア人、ウガンダ人、タンザニア人、ジンバブエ人…などきっとそれぞれに国民性があって、それぞれの国に歴史があって、それを知っていればより深く理解できる小説なんだろうなと思いました。主人公の心の動きがよくわからなかったところも、皆さんの話を聞いていると「そういうことか」と理解できたりして、とても良かったです。


 読書会では各自が一番気に入ったストーリーを挙げて感想を話したのですが、意外なくらいに偏らず、みんなが気に入ったお話がほとんどばらばらだったのが面白かったです。ちなみに私の一番は「震え」でした。主人公はその後幸せにはなれなかったのじゃないかという想像をしてしまう小説がどちらかと言えば多い中(あくまで私の想像です。結構ネガティブシンキングです笑)、登場人物ふたりの未来に光が見えるような気がして。
 自分でもさっぱりわからないのですが、「がんこな歴史家」のラスト3ページを読んでるときにふいに涙が出てきました。悲しいシーンでもないし、アファメフナ(グレイス)のその後の人生~自我に目覚め、父との確執、結婚・離婚を経て祖国に回帰していく~が淡々と描かれているところです。自分でも読みながら「なんで涙が出るんやろ?」とびっくりし、日をおいて再読したのですが、やっぱり泣けました。どなたか同じような方おられませんか?

 小説の中に、アフリカのお料理の名前がいくつか出てきました。「ジョロフライス」「ジ・アクウク」「ガリのオヌグブスープ添え」「スヤ」「ペペスープ」…。ジョロフライスは食べたことがあって、ひとつめのお話「セル・ワン」で出てきたときはテンション上がりました。いわゆる西アフリカの炊き込みご飯だそう。

 私が食べたのは、渋谷にある「Los Barbados」というアフリカ料理のお店です。Facebookで知って、東京に行ったときに食べに行ってハマりました。今も時々送ってもらっています。コロナで唯一良かったのが、ふだんなら東京まで行けないと食べられないLos Barbadosさんのアフリカ料理を関西にいながら食べられるようになったことです笑。
 今回「アフリカの小説を読んだらいろいろアフリカ料理が出てたんですよ~」と奥さん(ご夫婦でされているお店です)にメールを送ったところ、「アディーチェは大好きな作家です!」とお返事いただきました。翻訳されたくぼたのぞみさんも来店されたことがあるそうです。いつか、「アディーチェ・キッチン」という彼女の小説に出てくる料理をまとめて出すイベントをしたいと思っておられるそうです。そのイベント、実現したら猫町の人たちと行きたいな!