ムーミンシリーズの読書会も回を重ねて、残すところあと4回となりました。
来月、9月7日(水)の読書会の課題本は「ムーミンパパ海へいく」です。

◆小説版「ムーミン」について
ムーミンは、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンが書いた小説、絵本、まんが(弟ラルスとの共作)、アニメの作品群の名前です。

読書会では小説版のムーミンを読んでいます。
本国フィンランドで発表されたのは以下の順番です。
(★がついているのが次回9月の読書会の課題本です。なぜあと4回なのかというと、短編集である『ムーミン谷の仲間たち』を1~2篇ずつ読んでいっているからです)
『小さなトロールと大きな洪水』1945年
『ムーミン谷の彗星』1946年
『たのしいムーミン一家』1948年
『ムーミンパパの思い出』1950年
『ムーミン谷の夏まつり』1954年
『ムーミン谷の冬』1957年
『ムーミン谷の仲間たち』1962年
『ムーミンパパ海へいく』1965年    ★
『ムーミン谷の十一月』1970年

ムーミンの小説は、最初は子どもたちに向けて書かれていました。
1945年といえば、フィンランドはソビエトやドイツとの戦争に負けたあとで、街は瓦礫と化していて、しかも敗戦国としてかなりの賠償金を支払わなけければならない、そういう辛い時期でした。
トーベ・ヤンソンは、子供たちに向けて、そして彼女自身の内なる子どもに対しても、ハッピーエンドの物語が必要だと思ったのではないでしょうか。
だから初期のムーミンの物語は、「洪水」や「彗星」という危機を乗り越えて、ハッピーエンドになるという物語になっています。
しかしそのうちにトーベはさまざまな人生経験を積み、同時にムーミンも人気が出てきます。
トーベはムーミンの小説で名を知られるようになりますが、彼女は元々は絵画を中心に活動していました。
「子供向けのものを」という出版社からの依頼に対して、もうそんなものは書けないと思っていたトーベに、トゥーリッキが「あなたが締切や契約に追われているように、冬に独りで散々な目に遭うムーミントロールを書いてみたら?」とアドバイスしました。そうして書かれたのが『ムーミン谷の冬』(1957年)です。
ここから、ムーミンは読者を子どもに限定しない、幅広いものになっていきます。

◆『ムーミンパパ海へいく』について
冒頭にこんな一文があります。
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ムーミンパパはそれが好きだったのです。ガラス玉を見るのがパパの夕方のあそびでした。これを見ることで、家族がパパだけの知る深い海の底にいて、自分にはみんなを守ってやる必要があると感じられるのでした。
(講談社・ムーミン全集[新版]7「ムーミンパパ海へいく」トーベ・ヤンソン(著)、小野寺 百合子(翻訳)より)
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ムーミンパパは家族を連れて海に出ていきます。家族は新しい環境で、自分自身と向き合うことになります。

ミッドライフ・クライシス(中年の危機)、ジェンダー、家族とは、ということについてあらためて考えさせられます。

これまでのムーミンが好きだった人々からは最後の2巻である『ムーミンパパ海へいく』と『ムーミン谷の十一月』はあまり評判がよくないようです(実際本国でも出版時に論争もあったそうです)。
でも最初の『小さなトロールと大きな洪水』から20年がたち、トーベの芸術や生き方や信念も育っていったと考えるのが自然です。そこにきっと新しい出会いがあると思います。

ムーミンという不思議なキャラクターたちを通して語られる物語について、読書会でお話できたら嬉しいです。

読書会の詳細はこちらをご覧ください。
https://nekomachi-club.com/events/2227269778a5