12/20 クリスマスフェス2日目、月曜会主催『星の王子さま』読書会。
日曜の午前中にも関わらず、総勢55名の方にご参加いただきました!

ZOOMの背景をクリスマスの画像に変えている参加者の方がたくさんいらして、
朝から聖夜感満載でした。

課題本の『星の王子さま』は、フランス人の飛行士・小説家である、
サン=テグジュペリの代表作。

 ■あらすじ
  砂漠に不時着した飛行機乗りの「ぼく」は、ふしぎな少年と出会う。
  それは、バラの花とけんかをしたことをきっかけに、小さな自分の星を後にして、
  いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった…

初めて読んだ方、再読の方、訳者違いで読み比べた方、原文を読んだ方まで、
たくさんの読み方・考え方が集結して、とても盛り上がりました。

クリスマスフェスでもルールはただひとつ「人の意見を否定しないこと」。

司会のアナウンス後、6〜8人で振り分けたブレイクアウトルームにそれぞれ入室し、
グループごとに読書会を開始しました。
一参加者として、会の様子をレポートします。



私がいたグループでは、今回の課題本は全体的に好評でした。
普段の月曜会では、賛否や解釈が大いに割れることの方がむしろ多いので、
年齢・国籍を問わずに、今も多くの人に読まれているだけあるな〜と思いました。

初読ではなく再読という方も多かったのですが、
「昔読んだ時と感じ方が変わった」という意見に共感が集まりました。

・子どもの頃は、当たり前のことを書いてると思ったが、
 大人になった今は、当たり前のことが書かれているからこそ突き刺さった
・ラストの王子さまが星に帰るシーンは、子どもの頃はサラッと読んでいたが、
 今読むと、いかにも死を感じさせる表現が物悲しくて、
 自分も、目に見えるものに心を囚われる大人になったのかもしれない…と思った

もちろん、まったく別の意見もあり、
「子どもの頃から感想は変わらず、当時も今も、王子さまの言っていることがよく分かる」という方も。
「今も子どもってことかなw」
「いや、逆に子どもの頃からすでに大人だったのでは?」
大人とは、子どもとは。身近にして難解なテーマで、ワイワイ語り合いました。

冒頭の献辞の意味についても、様々な解釈が持ち寄られたり。

>おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)

大人が集う読書会で、クリスマスフェスにこの作品を大勢で語り合うのは、
なんか良いな…と思いました。


他。様々なシーンについて、感想が語られました。

・時間の積み重ねが愛になるという、バラのくだりが突き刺さった
・王子さまは大人たちの中で、点灯夫に対してやや好印象を持っているのが印象的だった
 自分以外のために働く=相手のことを考える ということが大事?
・「大切なことは目に見えない」
 情報がどんどん早くなる今の世の中では、
 明確な答えを求められることが増えている気がするので考えさせられる
・「王子さまと仲良くなったことで、空の星すべてを眺めるたびに嬉しくなる」は
 「推し」に関連する色を見るたびに、日常に幸せを見出すオタクと似ている気がする
 →オタクに限らず、普遍的な感情だと思う。内側の心が大事ということ
・大切なことは目に見えない=目に見えないことが大切、というのは、
 読んだ本で人格が作られていくことにも繋がる気がする


話題が尽きないまま、あっというまの読書会を終えて。
話し足りない人は、二次会会場CAT-TOWNへ。

話し足りん会場では、読書会では別のグループだった方たちと話ができます。
多岐にわたる感想の声を、一部抜き出してみます。

・フランス語の原文も読んだ。訳によりニュアンスがかなり変わる
 特にキツネと王子様の会話「飼いならす」の部分や、
 バラのために時間を「むだにした」か「費やした」か「使った」かの捉え方
・「時間をかけたから、バラを愛している」なのか?
 「バラを愛しているのは、時間をかけたから」なのか?
・結末も訳によって異なり、青い鳥文庫では、王子さまは死ぬ感じではなかった
・倉橋由美子はラストの訳をするかどうか悩んだとのこと
・『星の王子さま』というタイトルに訳したのは素晴らしい
 (小さな王子さまのほうが正しい)

・羊の登場は聖書的。やはり西洋の文化の根底には聖書が根強くあることを感じた
・羊を何度もNG出されて、最終的に箱を描く所にセンスを感じた。好き
・どうして王子さまは羊を書いてほしいと言ったのか?
・なぜ、羊は植物を食べるのに、羊を書いてほしかったのか?

・王子さまとバラは、男女のメタファーだと思う
・美しくて生意気なバラを鑑賞すれば満足って、女をそんな目で見てるんじゃねえよ!
・星の王子さまは作者40男が書いた都合のいい物語だから、子ども向けのキラキラしたものではない
・バラと王子さまの関係は、恋人や親子の関係を思い出させる
 行き詰まると何処かへ行きたくなるし、離れてみて初めてその関係の大切さを感じられる
・オリエンタルラジオの中田さんの動画(youtube大学)を見た
 「バラのために費やした時間が、バラをかけがえのないものにした」を意識して読めた
・王子と花の関係性のような、うまく表現できないが、
 過剰な意味で装飾してないような関係に憧れる

・1〜7番の惑星は七つの大罪
・お酒好きなので、お酒を飲むことが非難されてるようで悲しい(苦笑)

・キツネは友達ではなく、影響し合う関係でもなく、一方的に教える立場で描かれている
・倉橋由美子/訳の「キツネは哲学者」という解説がぴったり
・キツネは責任を迫る異性のようにも見える。関係性をはっきりさせようとしている。
・キツネとのやりとりは、人間関係の育まれるプロセスの可視化とも言える
・恋愛の相手として捉えた時に、キツネとバラとどちらが魅力的か?

・王子さまは結局死んでしまったのか?
・ラストシーンは「死」か「帰還」か
・なぜ「死」と捉えられる描き方にしたのか?
・この物語の中で、死というものにあまり重要な意味を感じない

・王子さまによる所有の旅の話では?
・王子さまは会話ができていないし、教訓くさくて苦手
・王子さまが性格悪く見える(自分がひねくれてるだけ?)
・答えが出るまであきらめないところは、子供の残酷さのように感じた
・最初は大人と子供の対立のように感じたが、読了して大人が子供の心を取り戻す物語だと感じた
・何かを見て思い出す関係は、その関係がなくなった後は悲しさが反復されるという裏の意味もあると思う
・絆を結ぶ前提として『時間』があげられていたが、現代は時間をかけずにアドホックに繋がる社会へと進んでいる
・↑そういった価値観が見落としているものこそ、文学が表現すべき対象では?
・王子さまの成長譚とも捉えられるか?
・「立派な王様になれない」と言っているので、成長しようとしているのでは?
・バラと対峙できるよう、成長したから星に帰った
・王子さま自身が、自分を子どもだと思っているわけではなさそう
・『星の王子さま』は『銀河鉄道の夜』よりも心情描写がざっくりしている気がする
 ジョバンニは鉄道で大人達と会って葛藤するのに対し、
 王子さまは「大人って変だな」で済ませてしまう

・『星の王子さま』は何回か読んでいるが、その時の自分の心理状態で
 成長物語だったりラブロマンスだったり色々な読み方が出来る
・今回が初読。大人になって読んだためか、うまくメッセージが汲み取れなかった
・『ピューっと吹くジャガー』のモデル
・漫☆画太郎 の『星の王子さま』を読んで独特の解釈に唖然とした

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色々な読み方があって面白かったです!
個人的には、ジャガーさんのモデルが王子さまという説が衝撃でした……

以上、クリスマスフェス『星の王子さま』読書会レポートでした。
日曜の午前中から、自宅を出ずに、これだけ濃い時間を過ごせる体験はなかなかないと思いました!
参加者してくださった皆さま、ありがとうございました!

文:さおり