12月19日(土)のクリスマスフェス・フィロソフィアの課題本は、33歳気鋭の経済思想家、斎藤幸平さん話題の書。今年9月に発行され既に第三刷で6万部以上の売り上げ。気候変動の深刻さをデータで提示しながら、資本主義の限界を唱え、現在世界で再評価が進んでいるマルクスの晩年の理論に最後の望みを託して「脱成長コミュニズム」で「人新世」の危機克服を目指す・・・。そんなチャレンジングな内容です。

1月のNHK Eテレ「100分de名著」のテーマ『資本論』の解説者でもある斎藤先生、今最も注目の若手研究者と言えるかもしれません。

当日は35人参加の6テーブル。猫町月曜会に毎年来てくださるみんな大好き柴田元幸先生😻読書会の同時間帯にもかかわらずご参集された皆さんだけに、思い入れが強かったのでしょう、どのテーブルも盛り上がりました。

全般的に、著者の主張は納得だが、現実的に動き出すのは困難という意見が多く、そこから様々な考えやアイデアの種が導き出され、建設的な議論が白熱したようです。一方、マルクスはじめ近現代思想に詳しい方が本作批判を語ったテーブルも。職業も年齢も価値観も地域も多様な参加者が集まり、それぞれの知見や意見を尊重する猫町ならではの風景ですね。

グローバル・歴史的に俯瞰した考えや、自分の人生に引き寄せた思いまで、それぞれの視点からの意見や議論で充実した時間になりました。当日の雰囲気をもっと感じたい方は、文末に参加者のみなさんのコメントを掲載しましたので、のぞいてみてくださいね。

「知性がみずからに課すいちばん大切な仕事は実は、『答えを出すこと』ではなく、『重要な問いの下にアンダーラインを引くこと』」(突然ですが、内田樹先生❣️の『寝ながら学べる構造主義』より)。今回の課題本は、まさに私たちが直面する重大な問題にアンダーラインをがっつり引いてくれ、議論のきっかけをくれたのだと思います。

そして!2月6日(土)に、著者の斎藤幸平先生をゲストに迎えて、もう一度この本の読書会が開催されます!
https://nekomachi-club.com/events/16dc4bf14dfc


話題沸騰の旬の本を、ご本人ご参加の読書会で読む、絶好のチャンス!!!
今回の参加者の中からも、モヤモヤしてる点を幸平ちゃん(勝手にファーストネーム読み)に質問したい!!という意見がたくさんありましたよ。今回参加されなかった方もぜひご一緒しませんか?

さらにさらに!次回の猫町倶楽部フィロソフィアは1月6日(水)、1月23日(土)ですが、課題本はこれまた話題の白井聡さん『武器としての資本論』。とかく難解な『資本論』のエッセンスを、現代社会に応用しながら優しく説明してくれます。
https://nekomachi-club.com/events/0fcdc20dac0e
https://nekomachi-club.com/events/827182a208b6


学生時代に『資本論』5ページで挫折したあなた(わたし!)も、はなから無理と諦めているあなたも、1月の『武器としての資本論』、2月の『人新世の「資本論」』、そしてEテレの『資本論』で、マルクスへの扉を開き、社会は変えられると考えるきっかけを作りませんか?

フィロソフィアでお待ちしています。



<当日でた議論・意見>
・そもそも環境問題自体が本当なのか?その前提でことを進めて良いのか?
・著者の主張する未来に向けての具体的な一歩はどんなことがあるか?
 →はたらき方改革は何はともあれ進んでいる。
 →売り手買い手の間で対話が発生して円満に解決している事例がある。
・具体的な内容は置いておいて著者の主張通りの未来になり得るのかどうか?
・日本人は苦しい状態に気付かないように慣らされて動けないようにされているのでは?
・著者の主張を実現するためには日本人のレベルが全く追い付いてない・・・。
・書き方に内輪向け感がある。

 「マルクス」「共産主義」と書くと胡散臭いと思われてしまうのでは。
→「3.5%」向けに書かれていると考えると納得できるのでは。
・主張について、新自由主義批判はよくあるが、グリーン・ニューディール(など)の

 方向性も批判しているのが新鮮だった。
・「生産」を問題にするのは面白いと思った。
・具体的にどうやってコミュニズムを実現するのかわからない。
・「1%」vs.「99%」というが、99%の中にも差があるのでは。
・必需品と贅沢品と判断基準は何か? 誰が判断するのか?
・コミュニズムが達成されたときの社会を具体的に想像するのが難しい。
・本書の問題意識や出発点は納得できる。が、それをマルクスという人物に引きつける

 必要性がよくわからない。
・本書の提案はなかなか現実的ではないと思うが、そもそも今の経済は無目的にただ

 猛烈に回っているだけように思われるので、その目的地を考えるべきという意見には

 学ぶところがあるのではないか。
・社会主義が解体してかなり経つが、マルクスや資本論に期待する人は

 一定数いるのだなぁ。
・著者のいう社会を目指そうとしても、全員一緒に強制的にはじめさせないと、
 国も企業も自発的にはやらないと予想する。
・緑の経済成長であっても、地球環境に破壊的変化が起きる可能性があるため、
 現実には、経済成長と環境負荷の抑制の両立は極めて困難であるということが勉強に

 なった。
・コミュニティはどうやって作られるのか。また、どの程度の大きさになるのか

 わからなかった。
・コミュニティが作られた際、仲間はずれにされる人が出てこないか心配だ。

 排斥されてしまった人々はどうするのだろうか。
・脱成長を目指すためにボトムアップ型のアプローチを採っているが、

 実際にそれだけで実現可能なのか。3.5%の人に向けて書かれているらしいが、

 人数が足りなさすぎるのでは。それだけだと理想の実現には難しいのではないか。
・分業になったら人々の生活レベルは大きく下がるだろう。

 先進国の人間がその選択を受け入れるのか疑問だ。
・(とある班の星評価は平均4点!)
・自然エネルギーに関しては、地域差が大きいのでもう少し事実確認が必要と思う
・農業の現場は手間暇が大変で化学肥料も使わなければ成り立たない。

 理想と現実のギャップを埋めるのは大変。
・格差拡大が要因なのはわかったが、どうすれば格差が是正されるのか。

 近代市民革命は倒す相手が王や貴族階層だったが、今は誰を倒せばいいのか。
 →そもそも日本は革命を経ていないので政治下手。
 →格差に関していえば、競争が激しすぎてしんどい。常に脱落の恐怖がある。
・SDGsが「大衆のアヘン」というのは同感でこのフレーズを持ってきたのは秀逸。
 企業に関していえば今までのCSR活動をカテゴリ分けしなおせば取り組んでいるよう

 見える可能性も。もちろん、やらないよりはいいのだが。