【24年7月の洋書読書会の開催レポート】
新型コロナの位置付けが5類になって1年ちょっと。感染者数が増加に転じているというニュースも時々耳にしますが、徐々に増えているインバウンドの観光客を見るにつけ、新型コロナ禍以前の状況に戻りつつあると感じる方も多いのではないでしょうか。
その様な状況の中、24年7月の洋書読書会は7/20にZoomを使ったオンラインにて開催されました。
課題本はカナダ出身の作家、Margaret Atwood の "Impatient Griselda" 。
ペスト禍にあった1350年頃にジョヴァンニ・ボッカッチョ(Giovanni Boccaccio)によって書かれた名作「デカメロン」(Decameron)にならい、新型コロナ禍にあった2020年にさまざまな言語、人種、ジャンルからなる世界の作家が書き下ろしたThe Decameron Project 全29編の中の1作品です。
今回の読書会には24名の方が参加され、6人ずつ4つのブレイクアウト・ルームに分かれての読書会スタートになりました。
課題本は英語ですが、読書会自体は日本語で行います。
各ルームでどの様な話がされたのか、どんな話で盛り上がったのかをいくつか挙げさせてもらうと;
● Impatient Griseldaは元々デカメロンの中に含まれていたPatient Griseldaに呼応する形で出来た作品。原作のGriseldaは非常に虐げられ、子供を殺され、本人もDVを受けと酷い扱いだったがそれは主人に対する従順さを試す試みであったとのお話だった。それから着想を得た作品で、一見、暴力的なご主人様に対し、現代のImpatient Griseldaは反抗するようなジェンダー作品にも取れるものの、ジェンダーの作品のように見せかけておいて、実は既成概念に対する全く異物の概念の構図という部分を描き出そうとしていたのではないか。
● 原典があってわざわざ書き換えた意図や、終わりの見えないコロナ禍においての作家たちの粋な試みであったことを思うと、なんかおしゃれだなと感じました。どんな困難な状況もシニカルな笑いに変えて、それを面白いと受け取れる読者とのコミュニケーションそのものが文学だなあと思います。
● 宇宙人の登場、未知のウイルスの蔓延、ネオ・グリゼルダの小話などから、これまでの価値観はひっくり返されるだろうというAtwoodのメッセージなのではないだろうか。
など様々な解釈や感想が語られました。
また、洋書読書会に有りがちな会話・感想として、
● よく出て来る"snacks"が何を意味しているか気になった。(人間も食べられる側であるという脅しのような意味を含むのだろうか?)
という内容も多かった様ですし、
● Margaret Atwoodの描く内容がロックでかっこいい!
といった感想や意見なども出たようです。
読書会後にはラウンジ・ナイトタイムに場所を移して、まだまだ話し足りない方8名ほどが23:00までの懇親会を楽しみました。
懇親会では、読書会の時には違うブレイクアウト・ルームになった参加者のお話も聞いたり話したり出来るので新たな発見があることも!
お時間がある方は、是非懇親会への参加もご検討下さいね。
【洋書読書会 第2期の振り返り】
盛り上がって終了した24年7月の洋書読書会でしたが、今回が過去1年間に渡った翻訳家の鴻巣友季子さんの選書による洋書読書会第2期の最終回でした。
これまでの1年間の課題本を振り返ってみると;
2023年
8月: "A Life in Fictions" by Kat Howard
9月: "The Member of the Wedding" (前半) by Carson McCullers
10月: "The Member of the Wedding" (後半) by Carson McCullers
11月: "Torching the Dusties" by Margaret Atwood
12月: "The Wild Iris" by Louise Gluck
2024年
1月: "Brothers" by Sherwood Anderson
2月: "Revenge of the Lawn" (前半) by Richard Brautigan
3月: "Revenge of the Lawn" (後半) by Richard Brautigan
4月: "The Cat in the Rain" by Ernest Hemingway
5月: "The Happy Prince" by Oscar Wilde
6月: "Small Things Like These" by Claire Keegan
7月: "Impatient Griselda" by Margaret Atwood
長さは短編や短編集から2回に分けて実施した長編までがありました。
作者の出身国は、アメリカ、カナダ、アイルランドの3ヶ国がカバーされました。
また小説だけでは無く、詩集が初めて課題本になるなど色々とバラエティーに富んだ選書で、継続して参加すると洋書の読書経験がすごく広がったと感じられます。
選書をして頂いた鴻巣由希子さんには、心から御礼を申し上げたいです。
本当にありがとうございました!!
【洋書読書会 第3期のスタート】
さて24年8月からの洋書読書会 第3期の選書ですが、翻訳家で第1期の選書をして頂いた柴田元幸さんにご担当頂けることになりました!
第3期のスタートとなる8月の課題本は、Jack Finneyの"The Love Letter" です。
短編集 "I Love Galesburg in the Springtime" の中の1作品で、課題範囲は ”The Love Letter” のみとなっています。
8/20(火)の洋書読書会の申し込みは既に始まっていますので、よろしければ参加をご検討下さい!
https://nekomachi-club.com/events/95510366c8d8
9月以降の課題本については、決まり次第ご連絡させて頂きます。
それでは、第3期のスタートを迎える洋書読書会を引き続きよろしくお願いいたします。
そして皆様のご参加をサポ一同、心待ちにしております!
洋書読書会サポーター
わか、ラナ、Yuriko、かわと、はまき、そねっち