「独学大全」は読みやすい本です。55個の《技法》を中心に書かれている本ではありますが、辞書を読んでいるような感覚はありません。本書の随所に著者の独学に寄せる思いが熱く述べられているからです。
それは「新明解国語辞典」を読むのと同様の楽しさと親近感を与えてくれます。時には熱く、時には淡々と、そして時には叫ぶように語られる思いは、私たちを強く勇気づけてくれます。
「うわ、ここずいぶん熱く語っているなぁ」という部分を広い読み《掬読》していくだけでとても楽しい本なのです。そしてそれが私の1回目の通読の感想です。
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2回目の通読ではそれぞれの《技法》についての分解能があがりました。
長編読書会「独学大全」は都合7回でしたが、1回分は概ね100ページです。そのぐらいの分量だと、読書会《会読》で何を話そうかも考えやすくなります。同じ部分を何回も行きつ戻りつ読むことで理解も深まります。
また読書会《会読》で話すことで、ちょっと苦手に感じた《技法》の意味が解きほぐれてきます。どうやってららよいかよくわからないと感じた技法も「試してみようかな」という気持ちになってきます。
1回目の通読では読み飛ばしてしまっていた各《技法》のディテールや位置づけも見えてきます。自分の中により深いレベルで《技法のネットワーク》が形成されていくのが感じられてきます。
そしてなにより《学ぶということに関して考えるきっかけ》を与えてくれます。私にとってのこの本の価値は、《学ぶという行為を俯瞰し意識的に考えることの大切さを示してくれた》ということなのです。それが私の2回目の通読の感想です。
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本書のすべての《技法》を通して著者は《自らが学ぶことについてのメタ認知の大切さ》を語っているように感じます。1度目の通読で「熱く語られている」と感じた部分は、すなわち《学ぶことにについて意識的であること》への著者の強い思いの部分なのだろうと私は受け止めています。
この本のに書かれていながら書かれていない《技法》が、もしあるとすれば、それは《学びに関わるメタ認知のメタ技法》なのかもしれません。いくつかの《技法》で著者はリスト化を勧めています。そしてそれは《学びへのメタ認知》の技法群です。
しかし、どういうときにこのような技法群を新たに試みてみるのか、定式化するときのコツは何か、プロセスとしてどのようにまとめて考えられるのかについての《技法》は、明示的には記されていません。55個の技法の最後に来るのは《メタノート》という《技法》ですが、方法論についてはどちらかといえばさらりと書かれています。
書かれていながら書かれていない≪技法≫は本文にもあるように読者への宿題なのでしょう。
そんなことを考えると、長編読書会が終わった後は、やっぱり3回目の通読だなと思うのです。