読書猿さんからの回答はこちらです!!

すーーっごく丁寧ですね!感謝!!





Q1・技法55メタノートの部分で「メタレベルから眺める必要性」について述べられています。読書猿さんがこの《メタレベルから眺める》を実践する際、意識的に行っていること、メタノートに書かれていることや各技法で書かれた以外の手順やプロセス、留意点がもしあれば教えてください。


A1・あえて付け加えるとすれば、まず書くことです。メタノートが必要になる時というのは、ひとつは学習が行き詰まったり、うまく行かないと感じて、頭の中でいろいろ考えてしまう場合ですね。
だからこそ、意識して、書くことに立ち戻る必要がある。
意識しないと、頭の中だけで大反省会を開催することになる。「ああ、いかんいかん。メタノートは書かなくては」と思い出すことが大切です。
そんな時は、頭の中だけで考えずに、まず頭に浮かぶものを全部書き出すことに専念する。そうして一旦自分の外に出したものを読み返す。書き出したからこそ、独学を通じて鍛えてきた〈読み書き能力〉を、人文知の力を、自分に対して発揮できる。これがメタノートという名前の由来であり、この技法の肝です。
『独学大全』は書くことに始まり書くことで終わる、独学者自身について人文知を適用することで支える書物です。
書き言葉は、人類がわずか数千年前に獲得した〈外部足場〉ですが、この数千年を、認知的にも物理的にも、我々の先祖が過ごしたそれまでの数百万年とはまるで違ったものにした大発明です。人文学者は、この力こそ、我々を人間にする力であると考えました。
未だ人ならざる者として読書猿もまた、この力を信じ、依拠します。
これはポジショントークというより、ダイレクトマーケティングですが、月曜日(4/26)に発売の週刊ダイヤモンドについている付録「独学日誌」は、この線を一歩進めたものです。うまく行けば、何倍も内容を充実した上で製品化されると思うので、よろしくお願いいたいします。このあたりは田中さんがうまく膨らませて、伝えてくれると思いますが(笑)。



Q2 ・一般向けでないとのことで企画で採用されなかった内容について興味があります。マニアのための続編はあり得ますか?たとえば本書が30万部くらい売れたらとか。

A2・これは書き手としては致命的だと思いますが、放っておくと、私の書く本は、どんどん分厚く、またマニアックになっていくと思います(笑)。
とある集まりで雑談で話したのですが「もっと頑張って、もう少し偉くなったら1000ページくらい書かせてもらえるかも」と発言したら、参加者から「そうじゃない」「そういうことじゃない」と総ツッコミを受けました。
続編というか、『独学大全』で本に書けたのは、学ぶことの始まりからはじめて、時間軸に沿った「流れ」の部分でしたが、分野を横断する「広がり」の部分が残ってます。さすがに、どれだけ縮めても1冊にはまとまらないと思うので、〈社会〉〈自然〉〈言葉〉の3部作になるんじゃないかと思ってます。



Q3 ・読書猿さんはどんな音楽や文学・芸術を好まれますか。小説などの創作や文芸評論などを期待してよいですか。

A3・音楽は、その時気に入ったものを記憶して、作業中、延々頭の中で鳴らしてます。なのでその時々で違いますが・・・。『独学大全』の読書会なので、『独学大全』の話をすると、2020年8月の校正作業の大詰めで、量が多いのに時間はなくて、こんなの絶対間に合わないと思ってたんですが、脳内BGMを米津玄師の「ピースサイン」にすると作業速度が倍増して間に合いました(笑)。
文学は苦手です(笑)。ひとり暮らしを始めた頃に持っていた文学の本は、岩波文庫の『寺田寅彦随筆集』全5巻と、宮沢賢治の全童話が一冊になった本だけでした。特に小説は、若い頃は本当に文章として辛くて、読めなくて。趣味が「苦手科目の克服」なので、一応努力はしました。誰かは言えませんがベストセラー作家さんの文庫本を買ってきて、我慢ならない部分に朱を入れて修正したりして(笑)。反省してます。
美術館とか博物館めぐりは好きで、旅行目的はだいたいこれです。体力がないに、めちゃくちゃ時間をかけてみるので、ヘトヘトになります。私が本を読むのが苦手なのと通底しているので、少し説明しますと、本を読むとそこに出てきた言葉とか概念に関係する記憶やアイデアがブワーッと出てきます。これは読書中に、いくらか関係はあるけれど際限なく脱線していく話を耳元で大声で喋り続けられるようなもので、そのせいでヘトヘトになる訳です。
同じように、博物館で、藤原道長が書いた日記『御堂関白記』が目玉の展示を見に行った時、律令制が崩れて、宮廷儀礼の情報を独占することが、いかに藤原家の政治リソースになったか、これに対抗するために藤原道真は六国史をカードにバラバラに書き写してまとめ直し、必要な事項をすぐに引けるレファレンスツールとして『類聚国史』を編んだこととか、ブワーッと出てきて20分くらいかかる。中々、次の展示へ進めない。
創作は、うーん、下手な上に時間がかかるので、様子見ですね。やるとしても、他のタスクを果たしてから、商業的に成立しないと思うので(笑)、同人誌でですかね。 



(編集者田中さんへの質問の回答)
Q・あとがきで、読書猿さんから企画段階の目次からある程度切り詰めて本書になったと言うことですが、実際どんな要素がカットされたのでしょうか。

A・独学者列伝 ※孔子、南方熊楠など と、独学年表を泣く泣く削っています…
どちらも本当に面白いので、必ずどこかで発表して頂きたいです




(編集者田中さんへの質問の回答)
Q・また、はじめに企画段階の目次案を受け取ったとき、第1印象はどんなものでしたか?

A・私の知らないことばかり書いてある!! 何だこれは…!!  とてつもなくすごい、これまでなかった本になる!!
でした。
本当に、私は無知くんのさらに無知バージョンをそのまま生きてるような人間で、大学でも全く勉強しなかったのでポモドーロテクニックしか知りませんでした…