読書猿さんから回答をいただきました!!
今回も充実してます!感謝!!
質問: 読書猿さんが、技法43の筆写で最初に取り組んだテキストはなんでしたか?同程度のテキストを選んでやってみたいと思います。
解答:どれが最初だったか忘れてしまいましたが、梶井基次郎か中島敦の短編小説だったと思います。
質問:音で聞く読書に対してどのようにお考えですか。Kindleの読み上げ機能などは使われていますか?
解答:読み上げ機能はKindleやiOS(iPhoneとiPad)のを使ったことがありますが、続かなかったです。人間の読み上げの方が聞いていて疲れにくいのか、長時間聞いていられる気がします。
「音で聞く読書」は、音声による〈読書の手すり〉あるいは〈動く歩道〉のように思っています。読むのがしんどい時など、自動的に進んでくれるのは助かるときもあると思います。
ただ、〈閉じた本〉が持つ長所の一つであるランダムアクセス性が「音で聞く読書」では失われてしまう。私のような通読を重視しない読み手にとっては、好きな時、好きなページから、好きなやり方で、好きなだけ読む、ということはかなり重要なので、私にとって「音で聞く読書」はメインの読み方にはならないように思います。
質問:限読について、読み切れなかった本はあらためて読まれていますか? 読書会では日々更新される情報源ー新聞、ネットニュース、日報が限読で読むという活用法が意見としてでました。
解答:限読は、基本的には制限時間内で読み切る読み方なので、「読み切れなかった本」というのは定義によりありません。おそらく制限時間内で「通読」しようとされているのではないでしょうか。それだと最後まで読めなかった本が出てきます。
限読がどういうものかを理解するのに「新聞」は良い題材だと思います。というのも、新聞を読むのに充てられる時間は、皆さんおそらく毎日同じくらいのはず。そして、新聞を隅から隅まで通読する人はあまりいません。文字数でいうと朝刊1日分が新書本くらいになるので、すべてを同じように読んでいると同じくらい時間がかかるはずなんです。よほど時間に余裕がある人を除けば、多くの新聞の読者はそんな読み方をしていない。限られた時間で自分にとって最大限の利益が得られるような、より良い読み方をしようとされているはずです。そして新聞の論点先行の文章構成も、紙面のレイアウトも、限読がしやすいように工夫されています。
質問:「スマホ脳」で引用されている研究では、紙の本のほうが電子書籍より、読書した内容の記憶率が良かったとされています。 読書猿さんは紙の本と電子書籍で理解度に差があると思われますか。子供の学習過程で紙の本を優先すべきとか、教科書を電子書籍がすることに根強い反対意見があることはどう考えられますか。
解答: どうなんでしょう。あるかもしれませんが、形式の違いよりも、私達が読む様々なテキストの内容や難易度の違い、読み手の準備や用いる方法などの方が、はるかに大きな影響がある気がしています。難しい本は紙で読んでも難しい。当たり前ですが。教科書については、なおさら、授業のやり方、教科書をどう使うのかの方が問題かと。
紙か電子かの話は、ノスタルジックなバイアスがかかってる気がして、あまり関わる気になれないです。なんでそう思うかというと、たとえば論文だと、ネットやタブレットの導入によって、検索から入手、刻読から注釈までシームレスで行えて、圧倒的に便利になって、あっという間に紙で読まなくなりました。それで理解度や記憶率が下がったか、誰も気にしてない。一方で論文を読む量、読める量は圧倒的に増えたと思います。
質問からそれてしまうのですが、紙の本がいいか電子がいいかみたいな議論よりも、読むこと自体をもっと真面目に考えた方がよいんじゃないかと思います。読むことはただ事じゃないし、自然に身につくものでも誰でもできることでもない。そして書き言葉をちゃんと読めることがどれほどの力を持つことなのかを知ることの方が、それぞれの人の読む力に、そして人生をよりよくすることに、つながると思います。
質問:電子書籍を使いこなすテクニックはありますか。
解答:基本的には刻読を中心にしています。マーカー機能でマーカーを引きまくって、あとで抜き書きする。ただ電子書籍だと、ここでつまずくのですが、DRM(デジタル著作権管理)の関係でコピーできる分量に制限がかかっていて、それにすぐに引っかかってしまう。どれだけマーカーしてんだ、という話なんですが(笑)。
なので、私の利用の優先順位としては、電子書籍はあまり上位ではないです。手に入ればコピペし放題の論文や、ネットを介して引ける事典専門が最上位になります。これらは全文をScrapboxにコピペしてから、Scrapboxの上で小さく分割して、刻読して、注釈しています。電子書籍で手間なく同じことができれば良いんですけど。