上野千鶴子さん&鈴木涼美さん『限界から始まる』、本の内容が濃すぎて読書会の時間が全然足りなかったです。あと2~3回は読書会ができますね。
上野さん、鈴木さん両名の本も、フェミニズムの本も読むのは初めて。
男の役割や立ち位置がなぜ今のようになってしまっているのかに興味があるのでジェンダー論の本(恋愛論含む)は読んできましたが。

上野さんと鈴木さんという組み合わせと往復書簡というスタイルがすごく良いですね。
まず、上野さんは女性学の第一人者としてさすがの力強い名言の数々。
心に残った文章は抜き書きしてまとめていたんですが、「それな」「そうそう」で本が赤線だらけになって収集がつかなくなってきました。
ただ、あまりに偉大過ぎて距離を感じるのも事実なので、そこに下の世代の鈴木さんがモヤモヤを上手く言語化して問題提起をしていくという構図で読者を往復書簡のやり取りに上手く接続してくれた気がします。
読書会後のお二人の対談での、
「男性読者に対しての、『身に染みた』という感想は結構だが、『こういう試みをした』のような行動につながらないの?男同士の往復書簡とか、男から少女漫画へ変だと突っ込むとか」
というのは大きな宿題です。うう、難しい。
ただ、無自覚にこの本に出てくるような「男」の嫌な行動をしていないかは気をつけないと。

お二人のように上手い言語化も自己開示もできないので、印象に残った個所をいくつか列挙してみます。

(p74)「近代のセクシュアリティの装置は、男と女とでルールが違う二重基準のもとに置かれていました。男はルール違反が前提、もっぱらルールを守るように強制されていたのは女だったのです」
→これホント嫌。どっちに合わせるにせよ平等になればよいのに。読書会でも性風俗についての話題になりました。

(p105)「わたしは性と愛を権利・義務関係のもとに置くこと、所有し、所有される関係を結ぶことがどうしてもガマンできないのです」「だから男が女に「守ってあげる」とは「幸せにする」というせりふほど、キモチ悪いものはありません」
→こういうセリフは言いたくないです。J-POPの「君に僕のものになってほしい」的な歌詞もゾワっとします。男女で経済的な面で差がありがちなのは現状では仕方ないとして精神的には対等な関係でいたい。

(p109)「家族形成のために法律婚は必須の条件ではありません。ですが、子どもの存在は必須です」
→家族形成に子どもって必須?子を持たない夫婦ないしはパートナー関係は?気になる箇所だったけど特に話せず。

(p156)「オトナになって男たちは、母性賛歌のほかはめったに語りません。ほんとうはもっと愛憎アンビヴァレンツがあるはずなのですが」
→いやだいぶあるけど。読書会でも親子関係は話題になりました。賢い母と愚かな母の違いとか。自分は賢い母の方でしたが干渉されるのがうっとおしかったから距離を置きたかったというのは、高校・大学・就職という要所の進路選択の一要素になってた気がします。

(p257)「なぜ男はあれほど無防備に、自分のなかのもっとも自分勝手で卑劣な部分を女にむかってはさらけだすことができるのでしょう?そして臆面もなく、その無理無体な要求をまるごとすべて受け容れよと、女に求めることができるのでしょう?」
→そういう男に何でそうふるまうことができるのかこっちが聞きたい。

(p291)「私(上野)は社会変革とは、ホンネの変化ではなく、タテマエの変化だと考えています。そして、そこまでが限界だと考えています」
→この視点は大事!読書会でも話題に上がりました。例えば選択的夫婦別姓制度が導入されたとして(阻む声があるのは理解に苦しみますが)、すぐに問題が解決されるわけではないけど、まず形は大事だと思います。

(p321)「「男ってそんなもの」だとしたら、そのなかには「もしかしたらオレだって」という共感があるはずです」
→「男」として自戒することは多いと思っていますが、あくまで一般論として女と男で「共感」の重視度に違いはある気がしています。


あと、小説だとどんな関連作があるかなと考えていましたが、話題に出なかったので自分なりに連想した作品を紹介しておきます。僕はどちらの世界観もなるほどと思って読みました。
・村田沙耶香『消滅世界』:夫婦間のセックスはNGで性のパートナーは別、男も人工子宮で出産できる、など。
・小野不由美『十二国記』:女性は妊娠で子供を産まない。欲しいと願うと木に卵ができる。

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