最近、ヴァイオリンのピアノ伴奏をやっています。
そのヴァイオリニストはとても色気のある演奏をする人です。伴奏をしていると、その人の世界に引き込まれる感じがします。なぜその人の演奏に色気を感じるのか、考えてみました。

その人は演奏中、ヴァイオリンの音色だけでなく、アイコンタクト、息づかい、ちょっとした動きなどを使って「ここはゆっくり弾きたい」とか「ここからだんだん強くしたい」など、自分の意思をこちらに伝えてくれます。そして私の動きをよく見て、私の思いを丁寧に汲み取ろうとしてくれます。

また曲の表現方法について、私は初め何のアイディアも持っていませんでした。でも一緒に演奏しているうちにどう弾きたいのか、自分の気持ちがだんだん形になってきて、それを自然と相手に伝えることができました。

つまりこの人は、非言語のコミュニケーション・ツールを使って自分の気持ちを丁寧に伝えてくれるだけでなく、私が心の底で感じていることを引き出して、さらにそれを汲み取ろうとしてくれるのです。こういう丁寧なコミュニケーションをとってくれるところに、私は色気を感じたのだと思います。

たまに「自分は好きに演奏するから適当に伴奏して」みたいな演奏家もいます。いくら演奏技術が素晴らしくても、そういう人の伴奏をしていてもつまらない。色気も何も感じません。

これって演奏の場面だけでなく、普通の会話、人間関係にも当てはまる気がします。

自分が何をしたいのか、どう思っているのかを丁寧に相手に伝え、相手の気持ちを丁寧に汲み取る、あ、これこの前の読書会で読んだ「N V C」じゃん。
この前「N V C」を読んだときは「自分の要求を相手に伝える」のところで「そもそも自分が何を望んでいるのかわからないから、伝えるも何も…」と思っていました。でも今回の伴奏で「自分自身でも気づけなかった、心の奥底で思っていること」を引き出せるようなコミュニケーションの形もあるのだということに気づきました。

自分のことって、自分一人ではわからないのかもしれません。人と関わることで自分の輪郭がわかってきて、そこから本当に感じていることや、やりたいことも見えてくるのかも。

一緒に演奏している間、その人と心の深いところでつながっているような感覚になりました。(あくまで演奏中の話ですが...)
こういうコミュニケーション、音楽だけでなく普通の生活の中でもできるようになりたい。
そして私も自分の気持ちを丁寧に相手に伝える、そして相手が心の奥底で感じていることを丁寧に引き出して汲み取る、そんなコミュニケーションができるような、色気のある人になりたいな。