てっきり文章の書き方の本かと思って調べてみたところ、ひとつのわりとどうでもいいできごとを99通りの異なる文体で描いていると知り、怖いもの見たさで読むことに。10くらいでも書くのを想像すると、ハードすぎて頭痛がしてきそうなのに、99とはどういうことだ…。

読んでいる途中で、数年前に書いたある求人広告を思い出した。「未経験OK、カフェのキッチンスタッフ、○○駅から徒歩3分、アットホームな職場、時給1100円」くらいの情報で、全く違う印象の求人広告を5本書いて欲しいという依頼だ。


この情報量で2~3本書き分けるのもキツいのに5本…。それをやる理由を聞いても納得できず、イライラするあまりミンティアをとんでもない勢いで食べながら書いた記憶がある。口の中をひたすら刺激にさらすことで気を紛らわして、精神を落ち着かせようとしたのだ(全く落ち着かなかったけど)。たぶん半日でミンティアを2個、食べきったと思う。

5本でも地獄だったのに99本…!うわあ…作者とんでもないな…となりつつ読むと、とにかく面白い(あんまり面白くないのもちょくちょくあったけど)!!笑ったり、つっこんだりで読んでいて忙しかった。


同じひとつのものごとでも、切り口が違うとこんなに違って見えるなんて!適当に3~4つピックアップして並べると、下手をすればさらっと読んだだけだと同じことを書いているとすら分からないかもしれない。


正直なところ小説を読むときに、文体にあまり注意を払わず、ストーリーやキャラクターに注目して読むことが多いので、この本を通して言葉が持つ魔力や可能性にハッとした。普段意識していないだけで、言葉の使い方しだいでもっといろんなことができそう。

小説を読むときは筋がとにかく気になってガンガン読み進めることが多いけれど、たまには書き方をじっくり味わってみると、楽しみ方が違ってくる気がする。

読書会では訳や訳者のギャグセンスがイマイチという話が出て、本当にそうなんだけど、あとがきとかに苦心の様子が出ているのも含めて、なんか憎めない…。

参加する前は感想の言語化が難しい気がして、読書会で何話そう…と思っていたわりに、いざ口を開くとどんどん話したいことが飛び出して楽しかった!