9月11日、著者吉川トリコさんをお招きして、読書会&トークイベントを開催しました。 

課題本は『余命1年、男をかう』 

 

 節約とキルト以外何ごとにも興味のない40歳独身事務員の片倉 唯が、ある日ガンが発覚して余命1年の宣告をされる。そのとき、たまたま出会ったピンク色の髪をしたホストにお金を貸すことになり… といういきなりの展開から始まる最新作、読書会では、 

  

・(瀬名のような男性と出会えて)唯がうらやましい 

 ・登場人物がみんなチャーミング 

・自分も<見た目だけでカテゴライズしてる>ことに気が付いた 

・今まで一人で生きてきたことを肯定された気がした 

・親から譲られたもの、自分が譲れるもの、って何だろうと考えた 

 

 

といった感想が出ていました。軽快な話の中にも、余命宣告を受けたらどうするだろう、家族との関係、一人で生きていくことなど、それぞれ自分の中に新しい発見や問いが見つかり、話のつきない時間となりました。 

トークタイム・懇親会でも様々な質問に答えていただきましたが、終了後、さらに当日のサポーターからトリコさんにインタビューさせていただきました。 

  

―― 久しぶりの猫町倶楽部読書会はいかがでしたが?  

 

楽しかったです!今回、今までより部数も出て、広い層に読んでいただけたのですが、ネットでの反響や感想は…わりとひどくて、地味にストレスためてたんです。星★1つから★5つまである、こんな本みたことない(笑)ってほど評価が分かれてる。低い評価の人は「ほんとに読んだ?」ってのが多かったし、誉めてくださるにしても「感動しましたー」みたいなざくっとしたのが多くて、ちゃんと書けてなかったのかなーって心配してました。でも今日はみなさんからの「読んでくださった上での感想」が聞けて「ちゃんと伝えたかったことが伝わってる」と思えてほっとしました。 

 

 

 

―― トリコさんにはオフラインでも猫町倶楽部の読書会のゲストに来ていただいていますが、オンラインになって変わった、と感じられたことはありますか? 

  

うーん、今日は読書会のテーブルを回るときに質問じゃなくて感想を聞けたのが良かったですね。やり方が変わったんですか?  

 

(タツヤ) 最近変えたんですよ。まだ3回目です。ゲストにも質問より感想が伝わるし、ずっと参加者は「質問がしたい」と思ってましたけど実は「感想が話したい」んじゃないかと気がついて。  

 

 

―― 今回の課題本の着想はどんなところから?  

 

推しの出てる余命モノの映画を見に行ったとき、私なら同じ題材をこう書く!ってアイデアが浮かんで、アンサーソングのように書こうと思ったのが始まりでした。きっかけは映画でしたが下敷きになってるのは「プリティ・ウーマン」。男性が女性を変えるとき絶対出てくるお着替えシーンを、女性がお金を出すならやりたかったですし(笑)、お金のこともきちんと書きたいと思いました。  

 

 

―― トリコさんが余命1年と言われたら何をしますか?  

 

講談社のエッセイ にも書きましたけど、もう、どうせ死ぬのに意識高いことなんてやれないですよ(笑)。なにかを新しくはじめるというよりはむしろ、これまで生きるためにしてきたことをやめて自堕落な生活をしてるんじゃないかと思います。『美味しんぼ』のアニメ見ながらお酒飲んで死んでいくかなー。  

 

 

 

―― トリコさんの作品の中でも今回の作品はとくに前半とってもテンポがよくて楽しかったのですが、テンポのよさを意識して書かれることってありますか? 

  

テンポの悪い小説書いてると絶対に編集から修正が来るんです(笑)。書き直しの恐怖が強すぎて、もうクセになってるかもしれないですね。エンタメ系の人気シリーズ書いてる作家さんが「2ページ以上地の文を続けられない」「会話入れなきゃ」って思っちゃう、って言ってました。純文学ならいいけど、私ぐらいの世代から下で、エンタメ寄りや中間小説の作家さんはやはり「読んでもらってなんぼ」って気持ちがあるのかも。とはいえ、あまりテンポよくしすぎると読み飛ばされるから、そのせめぎ合いの中で書いてますね。  

 

 

――編集サイドからの制限がなく自由に書きたいと思うことがありますか?  

 

いや、まだ私は書きたいように書かせてもらってる方だと思います。それに編集さんから指摘されたところを読み返してみるとやっぱりよくないんですよね。文章が鈍重になってて。純文学とか文章で読ませる小説なら成立するんだろうけど、テンポのよくない小説は自分にははまってないんだろうなと思います。  

 

 

―― 今後出る予定の作品を教えてください。  

 

9月末にWEBマガジンで連載していたエッセイ集『おんなのじかん』が出ます。 

あと、来年夏に1冊、がんばれば年内にもう1冊、連作短編集が出る予定です。  

 

 

―― 『おんなのじかん』はツィッター経由で読んでましたから、楽しみです! 

トリコさんには2014年ぐらいからゲストに来ていただいて、BL漫画の読書会(トリコ組)や「名古屋16話」の読書会も開催してきました。今、自作以外で猫町のオンラインでやってみたい読書会、ってありますか?  

 

そうですね…今フェミニズムの本がいっぱい出てるじゃないですか。買っては積み上げてあるので、片っ端から読んでいく読書会がやりたいです。毎月何冊も出ていて、だれだったかがTwitterで「もうそろそろフェミニズムを書いてるからOKではなくて、好みで決めていく時代」って言ってましたが、ほんとうにそうだと思って。これはラジカルすぎて寄れないな、とか好みが分かれてくると思います。  

 

 

―― いろんなフェミニズムの考え方から自分に近いものを選んでいく、ということですか?  

 

そうそう。好みを見つけてくことを考えていく段階に入ったかなと思います。  

  

―― 「フェミニズムは一人一派」という言葉もありますね。いろんなことを勉強していくうちに自分にフィットする言い方を見つけていくのはいいですね。今、フェミニズムを改めて知りたい、読みたい人は猫町だけじゃなくても多そうです。今日は長時間にわたり、ほんとうにありがとうございました。  

 

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さて、このあとトリコさんと主宰でトントンと話がすすみまして、 

早速ですが11月より【トリコ組オンライン】を始めることになりました! 

隔月で吉川トリコさん選書によるフェミニズム関連本で読書会を開催します。 

記念すべき第一回の課題本は 

上野千鶴子×鈴木涼美  『往復書簡 限界から始まる』  

 

またまた楽しみですね! 

ぜひ予定しておいてください。  

 

 

(インタビュー:あじさい 文:okko)