早いもので、猫町倶楽部が大阪で開催している「関西オフライン読書会」も三回目となり、 去る2024年の1月13日(土)に開催されました。場所はいつも?の大阪市は北浜駅近くのビストロ酒場YUZUさんです。
世間にはさまざまな読書会があるようですが、猫町倶楽部の読書会はあらかじめ示された「課題本」を参加者が読了したうえで本の内容や、それに関連した事柄について話し合うスタイルです。
今回、主催者の決定した課題本は『孫子』と『徒然草』でした。
参加者がそれぞれ選択した本ごとに4~5人ずつのグループに分かれて感想や意見を話し合います。
受付前の会場をのぞいてみると、準備中のようです。
読書会の準備、運営はサポーターと呼ばれるボランティアスタッフによって行われます。
サポーターの主な仕事は、
①独断と偏見と好みで選んだ、おやつの買い出し
②当日の参加者やテーマに合わせてのテーブルの準備
③受付や司会
④写真撮影
⑤懇親会終了後の二次会のお店さがし
等の作業の間に「だべったりして楽しそうな雰囲気をつくること」です(*個人の感想です)。
3回目ともなると、準備や進行もスムーズになってきました。
そんな感じでサポーターが働いて?いるうちに、電動キックボードに乗った、楽しそうなオジサンがやってきました。
実は、このひとが読書会の主催者のタツヤさんです。
「その乗り物なんですか?どこで手に入れたんですか?まさかそれに乗って名古屋から来たんですか?」みたいな会話で盛り上がったのは良いのですが、お店前には駐輪スペースが無いようで、彼はどこかに置きに行った模様です。
当会の参加者はどちらかというと真面目な感じの人が多い印象があります。私の経験では個性的な人はいますが危ない人はいないですね。コロナ以前より初めて参加した方から「いろいろ心配で実は参加を決めるまで半年悩みました」という声を何回も聞いたことがありますが、その時間もったいないですよ。現在悩んでいる方、どうぞ近場で直近の都合のつく時においで下さい。ほーら、怖くない、怖くない。。。
16時00分、開場し受付が始まります。
参加者さんが着席するテーブルは選択した課題本別に事前にランダムに決めております。
受付で申込時のお名前を名乗っていただくと、
・当日座っていただくテーブル番号のお知らせ
・お互い名前を呼びやすいように名札のお渡し
をしています。
名札には呼んでほしい名前を書いてくださいね。参加の記念のシールもお渡ししていますが、名札に貼るひとが多いです。
16時30分、主催者であるタツヤさんから御挨拶、司会から注意事項やタイムテーブルなどの説明のあと、第一部の読書会が始まります。
読書会は5~8名ほどに分かれて行いますが、まずは一人ファシリテーターという名前の進行役を決めます。
その役割はタイムキーピングや話が円滑に進むように心配りをすることになっています。
具体的には話が長いひとにブレーキをかける・口数少ないひとに発言を促してみる等です。とはいえ、参加者は全員大人なので、だいたいは何もしなくて大丈夫です。
もちろん当日いきなり決めるぐらいなので、専門的な知識や深い読み込みは不要です。もし貴方がファシリテーターに指名されて、上手くいかないと感じても、同じテーブルには常連や運営サポーターたちも居るので大丈夫です。
簡単に自己紹介をしてから、真剣に感想を語ったり、共感したり、笑ったり、ちょっと脱線したり。
なお読書会中はソフトドリンクが飲み放題なので舌もなめらかに。。。(個人的にはクランベリージュースが美味しいと思う、甘さと酸味のバランスがいい)。
テーブルにはサポーターが買い出しに行った、スィーツもありますよ。いやあ、おっちゃん、コンナお洒落なお菓子頂く機会は普段やったらなかったわー。
自分たちの会話だけでなく、隣のテーブルが盛り上がっている雰囲気が伝わってくるのも、オフライン読書会ならではの面白さですね。
猫町倶楽部の読書会には、課題本の読了以外にもう一つだけ重要ルールがあります。
それは「人の意見を否定しない」です。
たとえば「君が言ってることって間違いですよね、××先生の説によるとうんたらかんたらねちねち、はい論破」みたいな行為はウチでは禁止、ってことです(御遠慮ください、ではなく禁止、です)。
せっかくお金と時間と気力をつかって、休日に学校でも職場でもない場所に来ているのです。「正解」を探したり周りの顔色を窺ったりする必要はないですよね。心理的安全の確保された場で、それぞれが自由に感想を語ることで多様な意見を聞くことが出来ます。
「あなたは〇〇という感想をお持ちなんですね、なるほど。ちなみにわたしは△△という意見です。」ぐらいでも充分言いたいことは言えるはずですね。
もちろん本の内容についての批判はもちろんアリですよ。
コロナ以前より初めて参加した方から「いろいろ心配で実は参加を決めるまで半年悩みました」という声を何回も聞いたことがありますが、ここは安全です(大事な事なので2回言いました)。
私は『孫子』のテーブルに居たのですが、「組織の運用ってこのとおりにすれば上手くゆくのだろうか?けど書いてあるとおりにしたらブラック企業だなあ」「『孫子』をしっかり勉強して、運用できる国同士が戦うとどうなるんだろう?」といった意見が聞かれました。『孫子』はよくビジネスに絡めて語られることが多く、書店にゆくと『孟子』などはほとんど見ないけれども『孫子』は1コーナー分あったりしますね。マンガ版で読むとなお理解が進むかもしれません。
「歴史小説や歴史漫画を読むうえの背景知識として役に立ちそう」という意見からは横山光輝や司馬遼太郎の作品は読み始めると止まらなくなるので手を出してはいけない、それを言うならベルばらも徹夜コースだねえ、そういや紅天女って今現在どうなってるのとなぜか漫画の話になり、『テレプシコーラ』を経て、バレエ教室での大人のお稽古についての知見が披露されたりと勉強?になります。
それにしてもなぜか本について語ると、そのひとの価値観や考え方が、そしてその関連でその人の生活態度などが垣間見えるのも面白いところだなあと思います。
私たちは『孫子』をどう活かせるのか、という話題になりビジネス関連はヤル気のある人々に任せるとして、例えば「婚活」に使えるのでは、という意見が出ました。『孫子』の重要な主張の一つである「戦争はとにかくコストがかかるので、なるべく戦わないようにする」を応用して、いたずらに「愛される努力」や「特盛の自己PR」を重ねて婚活パーティでカップル成立を目指すのではなく、「敵を知り、己を知」ることで「この人と私はマッチングするのか、してよいのか、そこで互いが得るべき幸福とは何であるべきか、それはどの程度得られそうなのか」を冷静に考えるべき、というのです。
いやあ、古典って役に立つなあ。
18時40分、第一部の読書会は終わり、一旦閉会へ。
各種告知や連絡のあとサポーターが勝手に選んだ「ベストドレッサー」の発表が行われました。
猫町の読書会には毎回異なる「ドレスコード」が設定されています。お洒落さんやファッションに関心のあるひとは放っておいてもセンスと気合と根性で盛装して来ていただけるのですが、そうではないひともご安心ください。あくまで「せっかく日常を離れて来てるのだし楽しい雰囲気にしましょうよ」というお遊びなので、気楽にやりましょう。
今回のドレスコードは「カラフル」でした。例えばYさんはネイルが全部違う色でおまけにきらきらひかるモノでかざられていたり、Aさんは黒とグレイでシックな出で立ちに見えてネックレスやブローチ、イヤリングで華やさを際立たせていたり、Uさんは鮮やかなネッカチーフを巻いたりしていました。Sさんに至っては全身黒・・・ざわざわ・・・「よおく見て下さいよ、同じ黒でも色調や材質が違ってるでしょ、黒って結構カラフルなんですね」と水墨画のような自賛をいれていました。志が高いとファッションショーに、低いとコンセプチュアルアートまたは大喜利に寄る傾向があるようです。
着るもの以外にも、アクセサリーや小物で表現するのもアリです。ちなみに私は派手な色使いのブックカバーを持参しました。2月のドレスコードは「バレンタイン」らしいので、100円ショップでそれらしい何かを探そうと思っています。
今日の記念に(そして、このブログみたいな広報用に)全員で集合写真を撮りましょう。写り込むと差し障りのある方は本で顔を隠したりしましょうね。
18時50分、やっと?お楽しみの第二部の懇親会の始まりです。
現在、関西ではそのままの会場で行います。ここからは飲み放題ドリンクのメニューにアルコールも追加されますよ\(^o^)/
簡単なお食事もでます(個人的にはここのサラダは美味しいと思う、シーフードや豆などタンパク質多めでヘルシー)。
フリーで席替えをしながら課題本の続きの話や、最近見つけたマンガ、映画や美術、アウトドアスポーツなど趣味の話や、ときには仕事や恋愛などのお悩み相談をしたり。近頃は猫町で長期にわたって読書会が行われている源氏物語の話題が流行っているようですね。「薫と柏木、どちらがマシか」が論ぜられていました。光源氏と頭中将なら「どちらがいいか」であるだろうに、時代が下ると見方がシビアになるようです。なんか兼好も「今のものより昔のほうがいいよね」と似たようなこと言ってましたね。
「『徒然草』ってなにかと出家を勧めるけど、損得の話とか妄想・説教話(理想の彼女はコレな、若い男の生き方はこうあるべし、酒は飲むなand酒は飲むべし)とか、他人の失敗談とか、俗っぽいよね」
「出家はしないけど終活はしないわけにゆかない。押し入れの大量の私物をどうにかしないと。」
「出家って世を捨てる、というより『自分のためにすべき人生で大事な事』と言い換えるとセネカ師やスティーブン・コヴィ先生も『大事な事を見つけて最優先でやれ』っていってた気がする」
という風に課題本が複数あるとき、懇親会では自分が読書会に選択しなかった本について語ることもあります。
20時50分、申込いただいた、本日の猫町倶楽部のイベントは全日程が終了となります。忘れ物に気を付けて、速やかに退出いたしましょう。
この後、有志で(といってもだいたい半分ぐらい来たりする)二次会として更にもう1軒行ったりします。
次回は2024年2月17日(土)の同じ時間、同じ場所で、課題本は戸谷洋志『未来倫理』、ウィリアム・フォークナー『野生の棕櫚』(どちらか選択)です。
お楽しみに!