病院で長く働いていると、時々不思議な事を見たり聞いたりします。命が行き来している場所なので、そう言う事もあるかなとは思うのですが、やはり皆大っぴらには言わない。内々で密やかに語られている訳です。暑くなって来ましたし、今回は私が体験した少し不思議な話を一つ、お話ししたいと思います。

 看護師一年目、私は都心の大きな病院に勤めていました。数年前に建て替えられたばかりの病院だったので、スタッフの年齢層もかなり若く活気があり、毎日がとにかく慌ただしく過ぎていきました。
 私がその事に気づいたのは、働き始めて2年程経った頃です。その病院のナースステーションの一角には、ベットを一つ入れると一杯になる位の小さい部屋がありました。小さい上に窓もないせいか、どこか息苦しい様な雰囲気がある部屋で…いえ、息苦しいと感じるのはその部屋が、身寄りがなかったりして個室に移れない患者さんのお看取りの部屋として使われていた事があるのかもしれません。記録を書いたり仮眠を取るのに使い勝手は良い場所にあったのですが、今思うと、なんとなくスタッフはあまり使わない部屋でした。
 お看取り以外にも、その部屋は夜間、認知症などで静かに過ごすことの出来ない方に移動して一夜を過ごして頂く場所として使われていました。でも移動すると暫くは静かに休んでくれるのですが、その部屋の扉を閉めると大体再び「助けて」「出して」と叫ぶ様になってしまうんです。その声が余りにも切実なので、いつも結局部屋から出て貰い落ち着くまで暫く話を聞いていました。その時皆さん色々な事を話されるんですが、何故か皆さん同じ事を言っていのに気づいたんです。「4人いた」って。
 気づいた後、他のスタッフにも聞いてみると、どうやら「4人」というのは他のスタッフ達も良く聞く話らしかったです。特にその部屋で何かあったとかは聞いていません。ただ私が辞める迄、どうやら4人は変わらずいたようでした。

 この話からもう10年程経ちます。この病院は今ではすっかり人気病院になっている様です。
私は今でもふとあの部屋の事を思い出します。4人は今でもあの部屋に居るのでしょうか?
帰るべき場所に帰る事が出来ていれば良いのですが。

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書くかどうか迷ったのですが、因みにこの話には少しオマケがあって、その部屋から出てきた患者さん達に、私は何度か誰も居ないはずの背後を指差されて「いる」「いる」と言われたという話があります。
ある日、患者さんに冗談半分に「何人いる?」と聞いてみたところ、患者さんの答えはいつも「ふたり」でした。その時は特に何も思わなかったのですが、それから数年して違う病院に移った時、そこの患者さんに言われたんです。「近寄らないで、ふたりいる」って。