オンラインオペラ会でモーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』でした。
スカートを履いていれば誰でも手を出す主人公に対してアレコレ言う展開を予想していましたが、意外とモーツァルトの音楽が良いという話もしていました。
最後の地獄に落ちるシーンは演出でかなり変わるらしいので観比べてみたいです。

唯一知っていたのは有名なアリアの「カタログの歌」ですが、歌詞は「旦那に泣かされたのはあんただけじゃないよ。イタリアでは640人、ドイツでは231人、しかしここスペインでは何と1003人だ」とまあ無茶苦茶な内容。オペラ会では「この宣告は鬼畜だよね」という話も。
生き生きと歌うレポレロの顔芸とエルヴィーラのポカンとする表情の演技がノリノリで見る方も面白かったです。しかし、全くもってコンサートホールでスーツを着て真面目な顔で歌う歌ではないですね。

 面白い話題だったのは、そもそもドン・ジョヴァンニはプレイボーイなのか?という点。
 現代のプレイボーイは女性が自然に寄ってくる男性のイメージですが、ドン・ジョヴァンニは男性側からグイグイアタックして、しかもけっこうひどい扱いをされていたりするし。
あと、ラストの騎士団長の石像によるドン・ジョヴァンニの地獄堕ちのシーンがすごくドラマチックですが、なぜ石像なのか?さらに、作曲直前にモーツァルトの父親が亡くなっているらしいので、じゃあこの石像は何のメタファーなのかは深読みしたくなりました。

単に観た時は女好きの貴族が糾弾されて自業自得で地獄に落ちるという話という印象でしたが、加藤浩子さんの『オペラで楽しむヨーロッパ史』を読むとまた別の見方も。
初演が1787年というフランス革命の直前であり貴族社会の崩壊前夜という時代の気分が反映されている、ということでなるほどそういう背景もあるのかと。
マゼットなどの農民やオッターヴィオなどの市民が貴族をやっつけて身分制が崩壊するというのはまさに革命。そう考えると、宴会の場面ではやたら繰り返される「自由」という言葉も響きが変わってきますね。

 個人的にこの作品で1番印象に残ったのが、第1幕フィナーレでドン・ジョヴァンニの悪事が露見して村人が一斉に非難轟轟の合唱をするシーンで、群衆による合唱のパワーがすごいと思ったんですが、ここにこれだけの音楽をつけたモーツァルトの意図もこういう時代背景があるのでしょう。

 また、岡田暁生さんの『オペラの運命』によると、当時はギリシャ神話の神々ないしは古代の英雄が主人公となる「オペラ・セリア」と、同時代庶民が主人公になる人間劇を描く「オペラ・ブッファ」が分離して、後者が発展してきていた時期だそう。
 オペラ会の当日に出た
・はっきりこれだというアリアは無いが全体的にモーツァルトの音楽が良かった。
・ドラマとして普通に観れた。予備知識が無くてもストーリー置いていかれない内容。
・オペラにしてはドラマ性が全然無かったように思った。
・低音域の男性役ばかりに感じた。(※高音域よりは歌いやすい)
といった感想もここに起因するようです。

あと、序曲の映像では指揮をするフルトヴェングラーの威厳あるお姿を拝見できましたが、この演奏についてはどこが彼らしいのかはよく分からず。「バイロイトの第九」の熱狂ぶりのイメージが強いので。
この辺りは2/20(土)の指揮者本読書会の小室さんレクチャーで理解を深められるのを楽しみにしています。