こんにちは! フィロソフィアサポーターのこやまです。今年ももうすぐ終わりですね。

さて、アウトプットサポーターのケーさんが先日、1年の課題本を振り返るブログを投稿されていました。


これを受けて、フィロソフィアのサポーター内で「フィロソフィア版をやってみよう!」という話になりました。そこでフィロソフィアの今年の課題本を振り返ってみようと思います。

まずは全体的な傾向から。
2021年フィロソフィアふりかえり年表.png 1.71 MB
(↑ フィロソフィア2021年課題本年表。縦軸が出版年、横軸が国。)

国別で見るとフランスと日本が多いですね。日本の本は『日本の思想』を除き2019年以降に6冊が集中しています。フランスの本はヘビーなものが多く、読了するのに苦労しました。

出版年を見ると紀元前4世紀から2020年まで、約2400年に渡っています(プラトン『ソクラテスの弁明』がなければ約300年でした)。また、課題本15冊中13冊が20世紀以降に出版された本でした。意外と新しい本が多いですね!(ここで新しいと感じるかどうかは個人差がありそうです)

それでは、各月の課題本を振り返っていきます。

1月

白井聡『武器としての「資本論」』(2020)


2021年のフィロソフィアの最初の課題本は『武器としての「資本論」』。いま・この社会で生き延びるための武器としてマルクスの『資本論』を読むというコンセプトの本で、タイトルや表紙の印象に反して思いのほか読みやすい一冊でした。読書会では新自由主義的な価値観の是非や技術の進化などの話題で盛り上がりました。

2月

斎藤幸平『人新世の「資本論」』(2020)


2月の課題本の1冊目は、2021年の新書大賞にも選ばれた『人新世の「資本論」』。本書は2020年のクリスマス読書会の課題本でもありましたが、今回は著者の斎藤幸平さんをお招きしたゲスト会でした。折しも2021年1月の NHK 「100分 de 名著」は斎藤さんによる『資本論』解説で、副読本として100分 de 名著のテキストを読んできていた方も多かったです。読書会後の質疑応答では斎藤さんに時間ギリギリまで質問に答えてもらいました。ゲスト会は著者がその著作の中のどこにこだわっており、どこは妥協可能と考えているのかを知ることができてよいですね。

東畑開人『居るのはつらいよ――ケアとセラピーについての覚書』(2019)
2月の課題本の2冊目は『居るのはつらいよ』。こちらも『人新世の「資本論」』と同様に2020年のクリスマス読書会の課題本でした。沖縄の精神科デイケア施設での経験をもとに書かれたフィクション小説(守秘義務があるためフィクションになる)としても、「ケア/セラピー」や「いる/する」といった様々な対概念を扱う学術書としても読める本です。『武器としての「資本論」』や『人新世の「資本論」』とは、「脱成長」というテーマでゆるやかにつながっているという印象をもちました。

3月

石井 洋二郎『ブルデュー『ディスタンクシオン』講義』(2020)
あるいはブルデュー『ディスタンクシオンⅠ』及び『ディスタンクシオンⅡ』(原著1979)


フランスの社会学者ピエール・ブルデューは、一見すると個人的な事柄のように見える「趣味」が、実際はその人の家庭環境やその人が属している集団の属性から切り離すことができないものである、ということを『ディスタンクシオン』で示しましたが、その『ディスタンクシオン』を読み解く石井洋二郎さんの『ブルデュー『ディスタンクシオン』講義』が3月の課題本でした(『ディスタンクシオン』自体を読んできても OK)。『講義』の著者である石井洋二郎さんは『ディスタンクシオン』の翻訳者でもあります。読書会では、「猫町倶楽部の各分科会ごとのハビトゥスが、オンライン化により混ざっているのではないか」という話題が出ました(ハビトゥスが何なのか知りたい方は『講義』本か 100分de名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』    2020年12月 | NHK出版 を読んでください)。

4月

丸山真男『日本の思想』(1961)


4月の課題本は『日本の思想』。丸山真男の論文と講演録からなる新書です(有名な「『である』ことと『する』こと」も含まれています)。「大学生のときに読んだ」という方も多かったです。自分も再読組だったのですが、書かれている内容のアクチュアルさには驚きました(たとえば主義や制度を完成品として取り込んでしまう態度への批判などは、現代でもそのまま当てはまりそうです)。他方で、良くも悪くも図式的(二項対立的)だという感想も持ちました。内容面では図式的であることを批判しているにもかかわらず、形式面(書き方)はきわめて図式的であることが、分量的には決して長くはない本書を読み解くのを難しくしている気がします。読書会の後には「B面の岩波新書」に『日本の思想』に関する記事(いつもポッケに丸山を/吉川浩満)を書かれている吉川浩満さんによるレクチャーも行われました。

5月

ローラン・ビネ『言語の七番目の機能』(2015)


5月の課題本は『言語の七番目の機能』。フランス現代思想(最近はフレンチ・セオリーとも呼ばれていますね)の実在の思想家たちが沢山登場し、殺されたり指を切られたり発狂したりする記号論ミステリー小説です。記号論や言語学の講義が挟まれる構成には、筒井康隆の『文学部唯野教授』的な趣もあります。読書会では実在の人物の扱いのひどさへのツッコミもありましたが、自分は本書から「フランス現代思想を終わらせるのはソーカル事件ではない、この私(ビネ)だ」というメッセージを受け取りました。猫町ラウンジ内には、今も言語の七番目の機能を探し続けている人もいるようです。

プラトン『ソクラテスの弁明』(B.C. 4C)(初心者限定読書会)
5月には各分科会ごとの課題本が用意された初心者限定読書会も開催されました。フィロソフィアの課題本は『ソクラテスの弁明』。不敬神の罪で告発されたソクラテスの法廷弁論という形式をとったプラトンの対話篇です。長くはないものの決して易しくもない本書の読書会に参加した方の中には、後にフィロソフィアのサポーターになってくれた方もいました!

6月

木島泰三『自由意志の向こう側――決定論をめぐる哲学史』(2020)


6月の課題本は『自由意志の向こう側』。私たちに自由意志は存在するのか? すべては遺伝子や脳によって前もって決定されているのでは? といった問いに、古代の自然哲学からストア派、近代合理主義、ダーウィンの進化論を経由して現代の自然主義にいたる思想史を踏まえて(1~5章)、この問題に哲学の観点からアプローチする(6~8章)本です。2回の読書会で前半と後半をそれぞれ読みました。本書のポイントの1つは「自由意志」の概念がなくても「自由」の余地は残るかもしれない、ということかなと思います。個人的に良いと思ったのは哲学者ごとの説を説明する際の手際の良さで、「こういう風に説明すればスピノザとライプニッツの違いを際立たせることができるのか!」などと勝手に感動していました。


(下半期編に続く)

2021-12-28 追記: 下半期編はこちらです。