サンボマスターの『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』がこの読書にはピッタリと思ってます。多分この曲の熱量もって行動したのが今回の課題本の主人公デ•グリュ。


 昨年9月以来の駒井組参加。

 課題本は『マノン・レスコー』。


 結論から言うと、ずっとデ・グリュを推しながら読み進めていました。

 本を読むときって割と俯瞰的な視点で読んでしまうというか、あんまり共感や感情移入を求めて読むってことがあんまりないんですね。自分は。

 それがアウトプットやフィロソフィアのようなノンフィクションを読むのには割とあっているけれど、月曜会や駒井組のような文学だと、それがマイナスになるというか。

 文学を読むこと自体は大好きだけど、なかなか感想が出てこない。月並みな言葉になってしまう。だから感想がすらすら出てくるみんなすげーって思ってました。

 そんな自分ですが、今回は非常に語りたくなる一冊でした。だから昨年の『ヴェネツィアに死す』以来の文学感想ブログを書いている!


 読書会でご一緒した方には少し話しましたが、こんなに一人の人を思って暴走ともいえる愛情を注げるのって素直に素敵だなーと思ったんですね。

 彼の幸せとも不幸せともいえるのはずっと女性と縁遠い生活を送ってきて、初めて気になった女性、マノンが自分の最も愛情を注ぎたくなる理想の女性だったってこと。

 これが初めてじゃなくて何回かの恋愛を経験してその末にたどり着いたものであればここまで極端な行動をとることってできないんじゃないかなと思うんです。経験がその情熱を冷静にさせるし。


 初めての人が最も自分の理想とする人だった。そうなればその人にすべてを捧げたくなって、そのためには多少ずるいことや、やばいことをやっちゃうデ・グリュ。経験がないからこそできる情熱と暴走。そしてそれが割と途中まではうまくいってる。

 ティベルジュになんて何回頼ってるんですか。いくら親友だからってあそこまでできない。でもそれをやってのけてしまうデ・グリュ。そしてそれを助けてくれるティベルジュ(最後のシーン、ティベルジュは本当に助ける気があったのか個人的には疑問視してますが)。

 そしてそんな暴走はできない自分にとってデ・グリュはこれまたなんとなくまぶしく見えるのです。

 なので、マノンを「ファム・ファタル」ともあんまり思えなかったです。

 マノンが「ファム・ファタル」の代表的な人物らしいですけれど、そんなにおっかない存在には思えなかった。勝手気ままのレベルがちょっと普通より高いくらいのイメージ。

 マノンが誘惑したというよりはデ•グリュのハートが勝手に燃え上がったという感じ。マノンに悪い印象はあまり感じてませんでした。


 森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話体系』も頭をよぎったりも実はしてました。

 「全然違う!」って意見もめちゃくちゃあるとは思いますが、一人の理想を追い求める野郎の暴走、そしてそれが生み出す悲劇とも喜劇とも言えそうな展開がちょっとダブって見えたんですね。個人的には。


 読む人によってはただのヤバいやつに見えるデ・グリュ。でも自分はそれを愛らしく思い、推したくなった読書でした。