課題本のギリシャ神話を読んでいて、その語り手である古代ギリシア人のことが気になったので、本棚から世界史の教科書や資料を引っ張り出して歴史方面のことを確認していました。その中で、都市国家(ポリス)社会の頃を中心に古代ギリシア人の文明や国家などをざっとまとめましたので、8割方自分用ですが、同じようなことが気になる方の助けになればいいなぁと思い共有するものです。最後に課題本の感想を少し書きました。


①ミケーネ文明(BC20世紀〜)
・紀元前20世紀ごろにバルカン半島の北方から南下して、ギリシャ本土のミケーネを中心に文明を築いたアカイア人と呼ばれる人たちが、歴史に初めて登場するギリシア人である。
・彼らは先行文明であるクレタ島のクレタ文明(ミノア文明)や小アジア(現トルコ)のトロイア文明を征服。なお、クレタやトロイアの人たちの民族系統は不明。
→紀元前12世紀ごろにミケーネ文明滅亡。暗黒時代に移行する。

②暗黒時代(BC12世紀〜)
・紀元前12世紀以降、文字史料の残らない混乱時代(暗黒時代)に突入。
・人口減少、交易も途絶えた、現代人からよく見えないこの時代に、オリンポス12神、神話、神殿など古代ギリシア的なものが整えられたと思われる。
→紀元前8世紀ごろ、軍事的・経済的要地に人々が移住し、ポリス(都市国家)が成立して暗黒時代が終了する。

③都市国家(ポリス)社会(BC8世紀〜)
・ポリスと呼ばれる都市国家を単位とする共同体を形成、安定した社会を確立。ポリスは現ギリシア共和国の領域のみならず、イベリア半島から北海沿岸にわたる範囲に建設された。1000以上のポリスが存在したとされ、アテネはそのうちのひとつである。


※現代のマルセイユ(仏)、ナポリ(伊)、イスタンブール(トルコ)などはこの時代のポリスが起源。

・ポリスは各々が独立国家であり、各々の守護神を抱き各々の神殿を建て、統一へは向かわない。例えば水源をめぐって常に抗争する関係にある。
 一方で、同じ言葉を話し、同じ神を信じ、同じ神話や物語(ホメロス等)を共有することにより、ギリシア人としての同胞意識を持つ。

※アポロン信託のデルフォイ神殿や競技祭のオリンピア神殿は、ポリス間の協定により共同管理された。
※ギリシア人の同胞意識に対する異民族としては、例えば海洋交易民族のフェニキア人や、騎馬遊牧民族のスキタイ人、アケメネス朝のペルシア人。
※課題本でも引用されるホメロスは紀元前8世紀頃、ヘシオドス(『神統賦』)は紀元前7世紀頃の人。だから、ホメロスが『イリアス』等で書くトロイア戦争は、実際の戦闘から400年程度経っていることとなる。
※同時代、日本は縄文時代晩期から弥生時代初期。一部で水稲栽培が始まったくらいか。中国は周王朝〜春秋・戦国時代。そういえば、ギリシアのポリス社会と中国の春秋戦国時代には何となく似たような、自由な雰囲気を感じる。
→紀元前5世紀、多くのポリスを巻き込むペルシア戦争が勃発する。

④ペルシア戦争(アテネの黄金時代と衰退、マケドニアの勃興)(BC5世紀〜)
・紀元前500年に勃発。アケメネス朝ペルシアがイオニア地方(現トルコ)のポリスに対して課税強化したことに対するギリシア側の反乱が発端。ギリシア側勝利で終了。ペルシア再侵攻に備えた軍事同盟(デロス同盟)の盟主として、アテネの黄金時代到来。

※アテネの黄金時代は、ペリクレスという優秀な指導者による。彼のペロポネソス戦争戦没者追悼演説は、ご存知なかったら一度お目通しください。なんだか、現代のアメリカ大統領も言いそうなことが2500年前に演説されていて興味深いです。

・ペリクレス死後、大衆に阿る政治家によりアテネは混乱し衰退。ペロポネソス戦争などいくつかの戦争を経てポリス社会は変質、ポリスを作らない北方ギリシア人マケドニア王国の支配下に置かれる。

⑤アレクサンドロス大王の遠征、ヘレニズム3国、ローマの支配(BC4世紀〜BC1世紀)
・紀元前334年、マケドニア国王アレクサンドロス大王が東方遠征を開始。途中、アケメネス朝を滅ぼしつつ、西はエジプトから東はインダス川にかけた大帝国を建設するも、間も無く急逝。
・彼の後継者による、いわゆるヘレニズム3国が建国される。アンティゴノス朝マケドニア、セレウコス朝シリア、プトレマイオス朝エジプト。
・これら3国を始めとしたギリシア人の国は紀元前1世紀頃までに順次、西方から勢力を伸ばしてきたローマ共和国に征服されていき、紀元前30年プトレマイオス朝の滅亡(クレオパトラ7世の自殺)をもって、ギリシア人は完全にその支配下に入る。


○読書会の感想について

 3回ほどの課題範囲を読んで、自分にはいささか高尚なこの課題本にようやく馴染んできたところですが、文字記録なし口頭伝承で伝えられてきた各神格の起源がそこまで分かっているんだ、そんなところまで遡っていけるんだと驚いているのが率直な感想です。

 説明されている神々のうち、個人的に気になるのはアフロディーテーです。外国の神格ながらギリシア人の間に瞬く間に広まったという魅力も良いですが、その出自が中東地域の豊穣・繁殖の司神(地母神)であると示唆されているのが興味深い。中東ということは、最古の農耕地帯(肥沃な三日月地帯の西端)というわけで、ひょっとすると彼女は人類で初めて小麦を栽培した人たちが信仰していたであろう神様が、姿形を変えながら今まで伝わってきているのではないだろうかと想像するのです。(確認のしようはないのですけど)