長編読書会「独学大全」の第2回目、読書会であがった質問を著者の読書猿さんへ出したところ、こんなご丁寧な回答がきました!!!

ちょっと!次回からはもっと気合入れた質問をしたい!




質問①

「逆説プランニング」を使って学習の成果がでるというところにピンときませんでした。具体例をもう少し教えていただきたいです。

解答①
あまりにも真面目で意識が高すぎて、ピアノの練習ができなくなった男の子の例を紹介しましょう。その子には他にも逆説的な指示が与えられたのですが、鍵となったのは「逆説プランニング」に相当する「1日5分以上練習してはいけない」という指示でした。この子の場合、「もっと練習しなければ」「練習時間がこれ以上増やせないなら、もっと密度の濃い練習をしなければ」という気持ちが高じすぎて、あるべき理想の練習が生身の人間には実現不可能なところまで高まりすぎた結果、「不完全で短すぎる練習など意味がない」というところまで拗れてしまっていたのでした。より不完全で短すぎる練習の指示と、その指示を守らずやぶってしまうことで、意識が高すぎるあまりに練習できないという悪循環が解けたわけです。
実は質問をお読みして感じたことですが、ご質問者さんはおそらく具体例を紹介しても、この技法を必要とされないために、ピンと来られないように思います。
逆説的な技法は、解決の努力が却って問題を維持しているような悪循環を構成している問題に用いられます。「逆説プランニング」は病膏肓に入るレベルの、難治性の計画倒れ人のための技法ですが、計画倒れは単なるサボりではありません。「計画倒れ」と自覚できるほど、やりたいこと/やるべきことを持っているし、やり遂げたいと人一倍強く思っている。だから計画倒れという失敗を強く気に病むし、自分のダメさに深く傷ついてもいる。なのでますます計画実施を大げさなものとして捉えてしまい、余計に着手できなくなる。
「逆説プランニング」は、一面ではカリカチュア化であり冗談化の技法です。小さなどうでもいい「失敗」に焦点を当てて、大げさに取り扱うことで、失敗の深刻さと失敗からくる自責の念を「脱臼」させる。そして「失敗」の意味を、わずかで肯定的なものにリフレーミングさせるわけです。
一方、この技法は『独学大全』の中でいうと「1/100プランニング」や「2ミニッツ・スターター」と同様の「すこしだけでもやる」技法群に属します。
「3行読め」という指示を言葉通りに読むと、3行しか読まないのだから成果などほとんど無に等しいと思われるかもしれません。
ですが、たった3行でも、それまでの何も読まない状態からすれば、大いなる一歩です。さらに言えば、人は始めたことを中途半端なところで止めることが苦手です。取りかかれさえすれば、結構なんとかなることも多いのです。




質問②
読書猿さんご自身は、紙ベースでまとめているのでしょうか。デジタルベースでしょうか?ご自身は、どの技法を使っているのでしょうか?読書猿さんの知のデータベースを知りたいです。

解答②
紙ベースの時期とデジタルベースの時期を繰り返してきましたが、今はいろいろと環境が整ったのでデジタルベースに統合されました。
具体的には、携帯電話(iPhone)の他にiPad miniを2台と方眼ノート1冊を持ち歩いています。
メモはiPhoneでフリック入力か音声入力、手書きメモは方眼ノートに書きなぐる他に、そこら辺にあった裏紙とかポストイットとかにメモをとることもあります。これら手書きはiPhoneで撮影して2値化してGoogle Driveにどんどんアップロードしてます。
こうしたものを最終的にScrapboxに企画ごとにprojectにまとめているのがデータベースでしょうか。
調べものは、事典とか文献から記事をまるごとScrapboxへコピペして、その上でリンク機能をつかって、注釈をつけることが多いです。元になったテキストと、そこに自分がつけた注釈やメモが、すべてScrapboxで検索できるしリンクし合えるのがメリットでしょうか。




質問③
継続してやり続ける事が最も重要だと思っています。ご著書の中でたくさんの手法を紹介されていますが、継続と物量をこなすという視点から、実際に読書猿さんが使っている手法や効果を感じた手法を教えて下さい。
また、続ける事に挫折しそうになった時や、一度挫折して再チャレンジする時に有効な方法やマインドの保ち方を読書猿さんの実体験を交えたお話しをお聞きしたいです。

解答③
えーと、まず『独学大全』で紹介した技法はすべて使用済みです。読書猿自身が人体実験したものです。
特におすすめを、ということであれば、ラーニング・ログという技法が、シンプルなので取り組みやすく、また効果を実感しやすいです。なにしろ「効果を実感する」こと自体を目的にした技法なので。
私自身は「挫折の有段者」というか、もう息をするように挫折しているので、あまり劇的なエピソードにならないのですが。なんというか、カジュアルに挫折して、その分カジュアルに再開する(あるいは諦める)感じになってきてます。あんまり「挫折せんとこ」としてないですね。自分にあまり期待していないというか、そこでは頑張らなくなりました。
たとえば、いろいろ締切が入ってきて、もう13日間ドイツ語勉強してないな、とかはあるわけです。自分のやりたいことだと、せめてもう少しドイツ語読めないとどうしようもないんで優先順位は結構高いんですが、限られた時間で独学と執筆をしてるんで、まあ仕方がない。
マインドというか、あまり「心」は当てにしてないですね。マインドなんて保てない。そんな機能はヒトにはないです。それならば、皆さんがやっておられるように、ツイッターなりに目標を表明したり、ラーニング・ログを晒したりした方が確実だと思います。「マインドの保ち方」としては、逆説的ですが「マインドは保てない」ことを前提に外部足場をつくることでしょうか。
私も、これからも挫折しサボり続けるでしょうけど、他ならぬ猫町倶楽部さん相手に宣言したので、ドイツ語やると思います。




質問④
塩川いずみさんのイラストがかわいいのですが、これを使った、ノートや付箋や独学促進グッズの企画はありませんか?あるいは読書猿さん原作の四コマ漫画とか展開はありますか。

解答④
とてもうれしいご提案ありがとうございます。まだ案の段階ですが、現在ご相談しているのが『独学日誌(仮)』です。これは、独学大全の核となる技法「ラーニングログ」を実践するためのツールで、現在企画検討中ですので楽しみにお待ちください! そのほかのグッズについても、担当としてはぜひ作りたいので、応援よろしくお願いします!


※④のみ編集者の田中さんの回答です。



質問⑤
独学は自分をコントロールすることが主眼となっていると思いますが、コントロールしきれないもの(競争相手や相場の運など)について読書猿さんがどのようなスタンスで捉えているか聞いてみたいです。

解答⑤
ニーバーの祈りではありませんが、他人や運は自分にはコントロールできないものとして受け入れるしかないと、私のシステム2は考えています。システム1はそれでもジタバタともがき続けているのですが。
運についてはもう一つ、幸田露伴に『運命論』という本があって、運を良くする方法が書いてあります。ざっくりいうと、幸運が舞い込んだときは、それを一人で使い切らずに、天に預けておくとよいそうです。「天」というと現代の我々にはわかりにくいですが、リターンを期待せず、骨を折って誰かを助けたりするとよいかもしれません。受け取った幸運を独り占めせず、世の中に回していくと、再び幸運が訪れる確率が高まる。今どき流行らない古風な考えかもしれませんが、この考え方を知って私はいくらか良い気分になりました。




長編読書会「独学大全」は全7回の開催でして、各回個別で申込もできます。

気になる方はぜひご参加ください。

第4回 4/8(木曜日) 20時受付開始



第5回 4/15(木曜日) 20時受付開始



第6回 4/22(木曜日) 20時受付開始



第7回 4/29(木曜日) 20時受付開始