こむさんこと小室敬幸さんの全3回の西洋音楽史シリーズもついに最終回。
読書会だけでなく毎回分かりやすいレクチャーが付いてくるという強力なサポートのお陰でたくさんの知識と視点を得られました。
特に印象的だったことは以下の点です。

①西洋音楽史を学ぶ上で歌を軽視してはいけない!
②作曲家や作品だけでなく演奏される場が重要。宗教とか聴く人たちの存在とか。
③ヨーロッパの中では人の行き来が結構あって国を超えて影響をし合っていた。
④バッハやベートーヴェンはたくさんいる作曲家の1人にすぎない。ドイツは本来そこまで存在感が無い国。


課題本の『つながりと流れがよくわかる西洋音楽の歴史』は著者の方々の工夫が詰め込まれていて面白い本でした。改めて納得のこむさんチョイスです。

さて、第3回の今回は19世紀~20世紀ということで、ロマン派や国民楽派、そして近現代の音楽へ。

この時代はどうせ知っていることばかりだろうと大して期待もせず読み始めましたが、良い意味でひねくれている課題本なので知らないことも多かったです。
特にフランスオペラ。音楽を聴いたことがある作品はビゼーの《カルメン》ぐらい。日本にいるからなじみがないんでしょうかね。
というか、そもそもイタリアやドイツよりも先にフランスからオペラの説明を始めるのが面白い構成。確かに1789年のフランス革命がエポックメイキングな出来事なんだから自然な流れなのだなと。

あと、国民楽派が生まれた遠因もフランス革命という説明になるほどなぁと思いました。あぁ世界史に疎い。

(p197)ヨーロッパの国々は国は違えど、血縁や婚姻関係で結ばれた同じ「青い血」の一族の下にあり、…、「青い血」を外してみたとき、人々に見えてきたのは自分たちの国、自分たちという民族でした。

そもそも、人気があるロマン派のオーケストラ音楽とピアノ音楽をわずか11ページ(+ピアノコラム2ページ)に押し込めてしまっているのがかなり大胆な方針。このバッサリ感が素晴らしい。
その分、オペラと歌曲にはもっとページを割いているので、これが音楽史における”本来の”ウェイトだったのでしょう。
いかに自分が考えている「クラシック音楽」が器楽曲に偏っていることか。

あと、なじみのある作曲家がたくさん出て来るものの、全3回通して読んで&聴いてきたためか、ロマン派って大して新しいことはしていなくて同じような音楽ばかりだなという印象でした。
ジョスカン・デ・プレ、モンテヴェルディ、ベートーヴェンなどの方が大幅に音楽を変えている。

(p156)音楽の作り方から見ればロマン派は…調性を基盤とし、メロディをハーモニーで支えるという古典派と同じもの。…。ロマン派においては形式よりも、人間の自由な想像力や心の揺れ動きが重視されます。

ここの簡潔な説明がすごく分かりやすかったです。そして個人的に、この[第1節]の時期の曲を知ってはいるけどあまり聴きに行かない理由がおそらくこれ。
器楽曲のコンサートでこの時期がメインだった回は、ここ数年では1年半前のブラームス2番ぐらい。しかも、コロナ禍で中止になったコンサートが再開され始めて生音に飢えていたからだし。一方で、[第3節]の国民楽派やマーラー以降は今年に入って既に3回聴きに行っています。
ちなみに、オペラについては食わず嫌いはもったいないので猫町で開催していたオペラ会に参加しつつ積極的に観に行っていました。

さて、4月のこむさん会は現代音楽。
昨年発売されてすぐに購入して読んだ沼野雄司さんの『現代音楽史』がいよいよ課題本になる!ということで早速申し込みました。
1回読了しているとはいえ、聴きたい(観たい)作品がたくさんあるので計画的に準備していかなくては!