前回 https://nekomachi-club.com/blogs/996c4063cb2d の続きです.


 トップの画像は,edanz learning lab 様 https://learning.edanz.com/courses/journal-se よりお借りしました.


 前回は,「論文の内容は Abstract 読めばわかるよ」程度の内容に終わってしまったのでその続きです.


 文章であれ画像であれ,Abstract を見るためにはそれが掲載されている論文誌を読む必要があります.幸い,今は殆ど全ての論文誌のWebサイトに,Abstractまでの内容は掲載されています.また,Abstract までなら普通はお金はかかりません.

 どういう論文誌をチェックすればよいのかは,調べたい内容の学術上の分類が分かっていれば自ずと決まります.大体の論文誌は特定分野の専門家向けに編集されているので,内容が具体的になるほどそれに特化した論文誌があります.見つからない場合は,その一つ上のジャンルで探してみましょう.


 大雑把に言って


科学全般:Nature, Science

┣物理学:Physics Letters

┣生物学:Cell

┣化学:ACS, Angewandte Chemie

 ┣無機化学:Inorganic Chemistry

 ┣有機化学:JOC

  ┣高分子化学:Macromolecules, Polymer, JPS

   ┗プラスチックのリサイクル:Polymer Degradation and Stability


みたいな感じで,大分類から小分類まで各段階ごとにそれを専門とした論文誌が存在します.幸い,Wikipediaには論文誌の分類の項目があるので,とりあえずはそこから探してみるのが早いでしょう.

https://en.wikipedia.org/wiki/Category:Academic_journals_by_subject_area


 とは言え,「有機化学」ぐらいの解像度では,いくら何でも読むには数が多すぎます.なので,具体的な論文を検索していく手法について考えていきます.



 非常に幸運なことに,化学の分野では100年以上前から検索法が整備されています.

「論文の概要は Abstract に書いてある.だったら全論文誌の Abstract だけ集めればいい.ついでに著者とか化学物質でも引けるよう索引もつけよう」という発想のもと,1907年にアメリカで Chemical Abstracts という論文誌が発行されました.端的に言うと「論文誌の索引の索引」です.

 当然ながら,膨大な情報が収録されているため紙の雑誌としては物凄い厚さになります.過去一年の論文を纏めた冊子を重ねると優に 3 m 以上になるそうですが,実際に紙で置いてあるのは一握りの大学図書館だけでしょう.自分も実際に紙の冊子で検索した経験は2回ぐらいしかありません.「昔の人の苦労を実際に体験しよう」的な講義の一環でした.

 

 現代主に使われているのは,この Chemical Abstracts を元に作られた SciFinder という情報検索ツールです.が,タダではありません.同時に検索する人数などに依るそうですが,安くても数百万円/年ぐらいはかかる,らしいです.理工系の大学や大きな研究所でも無いと,気軽には使えませんね.(そのうえ,同時接続人数の都合上,他人とバッティングしない深夜が狙い目,とかいうしょうもない理由で徹夜する人も多いです.)

https://www.jaici.or.jp/SCIFINDER



 結局,無料で使える論文検索としては,Google Scholar が一番頼りになります.昔は少々怪しいところもありましたが,分野問わず多くの論文にダイレクトに繋げてくれます.

https://scholar.google.com


 日本語の情報でしたら国立国会図書館サーチ.複数のデータベースを横断できるので強力です.

https://iss.ndl.go.jp


 この他にも色々なサービスがありますが,技法27のページにもあります通り基本的には有償.また,どうしても分野や出版社ごとのしがらみがあり,色々制約もあります.とりあえずは上記2つを使ってみて,それでもシックリこなければ,最寄りの大学図書館に行くことをお勧めします.

 学生などの資格が無くとも図書館だけは使わせてくれる大学は多いです.その大学が有償の検索ツールを契約していれば,司書さんに頼んで検索して貰える場合もあります.検索した結果出てきた論文が有償のものでも,印刷せずに読むぐらいまでは許してくれる所もありますし,紙の雑誌で購読されていればコピーをとれるやも知れません.

 ただ,コロナの影響で大学の事情も色々複雑化していますので,どの程度のことまで許されるのかは,事前にしっかり調べてから参りましょう.



 さらに言うと,著作権法的に限りなく黒に近い無料の検索ツールも,ネット上にはあるにはあります.と,言いますか,著作権とか気にしないため出版社や大学の都合なんて無視できるので,検索ツールとしては非常に強力だったりするそうですが,流石に直接紹介するのは控えます.(全く,人類の存在理由である真理の探究が,資本主義の都合で制約されるというのはおかしな話です.)



 以上,何やら尻すぼみな文章になってしまいましたが,何かのお役に立てれば幸いです.また,何かわからないことなどありましたら,コメントいただければできる限りは対応いたしますので適当にどうぞ.