昨日はオンラインギリシア神話マラソン読書会の第一回でした。七草がゆの日だったのですが、全然そんな余裕はなく。子どもが親子丼を作ってくれていたので、帰宅後、かっこんで、お風呂に入り、読書会の受付にインしました。

今回の読書会は、「問いを立てる」ことを推奨しているようなので、思ったこと、興味を惹かれたところを問いに変えつつ読書。範囲は「第一章 オリュンポス以前の世界」。
以下、課題本の内容を含む読書感想メモです。神話なのでネタバレとか関係ないようにも思いますが一応。

なんといっても、創生部分の父と子の血なまぐさい敵対関係が印象に残りました。父は息子を自分の敵と見なして警戒し、逆に子は父殺しによって自分の権利を確立することが繰り返し語られる。同時に母と息子の関係も、単に母として子を愛するというより、もう少し近親相関的な、母を父から奪い取るような、母は夫より息子を男として選ぶようなイメージも感じられる。


(p.32)ウーラノスは妻ガイアが産んだ怪物ヘカトンケイレスを忌み嫌い、タルタロスへ閉じ込め、ガイアは不満を持っていた。そこでガイアは子どもたちに父ウーラノスに叛逆するよう促し、それに応えた末子クロノスが父ウーラノスの陽物を鎌で切り捨て、天地の支配権を奪い取った。
ここで、ガイアは妻であることより、子どもたちの母であることを選び、子どもたちに父を殺するよう導くところが興味深い。

(p.33)クロノスは、父と同様にヘカトンケイレスらを怪物として疎みタルタロスに閉じ込める。ガイアが同じことをしたウーラノスを殺させたことに思い至らないものか?さらに、自分の子どもに、父同様支配権を奪われるという予言を恐れ、自分の子が生まれる端から飲み込んでしまう。これに対して、妻レイアーが怨み、末子のゼウスが生まれると隠す。ゼウスが長じて、再び父クロノスに反旗を翻すなど歴史が繰り返しています。

◆問◆ギリシア神話のスタート、創生部分は、なぜ血なまぐさく、父が子を恐れ、子が父を殺し、権力を奪い継ぐものなのか?
ギリシア神話のイメージ、神々が天界で遊び恋愛し悦び楽しむという物語とは、ギリシア神話のスタートは異なる血なまぐさいスタートであるのは、実際の歴史でも人の世界は、治世が軌道にのるまでは物々しいものであったからなのだろうか? 創生部分は実際の人の歴史を実は語っているとか?

◆問◆なぜ末子が父を殺し、権力を継ぐのか
支配権を奪い、母を奪うのが毎回末子である点も興味深い。実際、末子相続という文化もあるそう。成長した者から独立するため、最後に両親の元に残るのが末子であること、複数の女性が妻である場合、末子の母親が最後に寵愛をうけた存在であることが、末子相続の理由なのではないかと思う。長子相続となる文化とは、どこでどう異なる方針となるのだろうか?

今回の範囲で一番面白かった逸話は、第四節 女の創造と大洪水。人類に知恵ある技術を教え、神から火を盗み人に与えるプロメーテウス。今でもリアルで尊敬と親交を集めているのだそう。
今回読んでみて、記憶にあった哀れな人類に同情し神から火を盗み人に与えたエピソード以前から、犠牲の供物を神と人の取り分に分けるところから、ゼウスを試そうとしたという部分に興味を惹かれた。

◆問◆なぜプロメーテウスは、喧嘩を売るような形で、ゼウスの不興、怨みを買うようなことをしたのか?
プロメーテウスは、権力者により信仰を強制された新興の宗教に対する、土着で旧来の神の代表であり、土着の神を信仰していた被支配地の人の代弁なのではないか。日本の神話での天孫系の天津神に対応する、旧来の各地の土着信仰、国津神に対応するものではないだろうか。

一方、女性の描き方はこれでもかと貶し、落とそうとしている。これを書いたヘーシオドスは、何か女性に怨みでもあったのか?と思うほど。パンドーラー(すべての贈り物)は、ゼウスが人類に禍を与えようとして各神が贈り物を与えて作り出した女性ですが、「彼女からすべての女族は出ている」「あの恐ろしい女の種族、死すべき人間のやからの間に住んで、大いなる禍を彼らにもたらし、おぞましい貧困においては道連れにならず、富と充足においてだけ連れ添う。」「働き蜂に養われる雄蜂のように」「他の蜂が働いて蓄えた蜜を、巣に怠けていて腹いっぱいに喰う」と、けちょんけちょんの言いざまである。
さらに、パンドーラーは、神が贈った甕の蓋の封、開いてはいけない迷惑な贈り物を我慢できずに開いてしまい、あらゆる災いや害悪、疫病などを人の世界に解き放つ。もちろん、開けてはいけないと言われていたのだから、開けたパンドーラーが、女が悪いということだろう。(後に、希望だけが残ったとは、世界に希望は解き離れていない、世界に希望は無いということか?なぜ神は希望も一緒に入れておいた?)

◆問◆なぜ神話では女が人類に禍をもたらすものとして描かれるのか?
神話で語られる女性を貶める表現は、旧約聖書の創世記でも、食べることを禁じられていた善悪の知識の樹(知恵の樹)の果実を、イヴがヘビにそそのかされて食べ、アダムにも分け与えた結果、裸をイチジクの葉で隠すようになり、楽園から追放され、不死を失って苦しむことになったとされていたと思います。仏教でも、女は成仏できないとされていたのでしたっけ?ギリシア神話には、女神も多く登場するので、一神教の神話体系よりは男性だけに偏っていないかと思うのですが、政治や財産上の権利はやはり男性主体であったのかもしれません。
それに比べると、日本の神話では天孫神の最高神が、天照大御神で女神であることは、ちょっと他と変わっていて面白い。しかし皇祖神が女神とされながら、天皇は男性継承となったところが不思議でもある。このあたり、興味があって調べたら「天照大神男神説」というものもあるらしい。実際、歴史上も巫女やシャーマンが力を持つことはあっても、大部分の歴史上では男性が権力を持っていたのだろうから、とも思います。

読み始めてみて全般的には、ちょっと読みにくい。非常に綿密にギリシア神話について体系立ててまとめてくださっている、研究成果としては素晴らしい本だと思うのですが、神話物語として楽しむというアプローチではないようです。この辺りは、読書会に参加した他の方も同様に感じているようでした。まだ導入の一章だからかもしれませんが。今後、昔読んだことのあるエピソードとか、英雄譚とかも登場するでしょうから、また印象も変わるかもしれせん。


読書会後に、SNSで読書好きの友人と話をしていて、非常に面白そうなサイトを紹介してもらったので、こちらに紹介します。上で私が疑問に思ったことに対しても、なるほどと思った意見が述べられていました。

Barbaroi!


例えば、私が疑問に思った創世記の部分、子が父を殺して権力を得るところ、母と息子の関係についても、

「現在は「息子」と翻訳されている単語が、古代ギリシャでは「古い支配者から権力を奪い取った新たな支配者」を示す」とか、「「王権は大母神の化身たる女王(巫女)との聖婚によって与えられる。女王の娘は『若返った女神そのもの』であるが、息子は『人間』と看做されるので王になるためには『女神』との聖婚が必須」であったことを示すといった意見があるそうです。

ギリシア神話の神々の関係についても、「征服者の神が上位に位置付けられ、被征服者の神の役割を吸収したから」という説があるのだそう。こういった背景や歴史も合わせて読むと一層楽しめそう、今後活用していきたいと思います。