本書は、2011年に『イノセント・ガールズ――20人の最低で最高の人生』というタイトルで刊行された単行本が、大幅加筆の上に文庫化されたもので、2022年4月に出たばかりです。読了してみると、どういう角度で「イノセント」と言っているのか、わかる気がするのですが、予備知識なく「イノセント・ガールズ」かと思って読んだら、どーこーがーじゃー!と思うことでしょう。だからこその、説明めいた副題なのかもしれません。

1920年代~1990年代ぐらいのアメリカにいた女性たちの濃ゆい人生を一人10ページぐらいの章で紹介しています。正直、「真似のできない」というより、真似しようと思うか?と問いたい。でも共感しないとも言い切れない。エッセンスはわかります、でもまたずいぶんと振り切りましたね、という感じの21人です。

読書会で、この人のこれが良かったとか、どう思うかとかいう話になったら、たぶんどの話か覚えきれんと思ったので、あらかじめ21人の分布図(わたし調べ)を作って臨みました。Y軸が「立ち位置」で、独立(上)~依存(下)。X軸が「その人を駆り立てるもの」で、欲・虚栄心(左)~社会からの受容・居場所(右)という感じに、五段階で評価しました。

皆さんから見たいと言ってもらったので、こちらに載せます。
IMG_5221.png 2.39 MBそれぞれのお名前のプロフィールはこんな感じです。(本書もくじより)

イディ・ブービーヴィエ・ビール/グレイ・ガーデンズの囚われ人
デア・ライト/寂しがりやの人形絵本作家
ドリス・イートン・トラヴィス/ジーグフェルド最後の舞姫
カレン・ダルトン/ 路上で死んだフォーク・シンガー
ジュリア・フェアチャイルド/テレビスターになった料理研究家
フローレンス・ブロードハースト/嘘つきなテキスタイル・デザイナー
メーヴ・ブレナン/「ニューヨーカー」の孤独なコラムニスト
キャロライン・ブラックウッド/アーティストたちを虜にした美神
フィリッパ・スカイラー/ハーレムの天才ピアニスト
ドロシー・ドレイパー/カリスマ主婦デザイナー
リリアン・ロクソン/ロック評論界のビッグ・ママ
ガナ・ワルスカ/ロータスランドの女王
コリータ・ケント/ポップ・アートな修道女
ジャッキー・オーメス/アフリカ系女性初のコミック作家
ドリス・デューク/シャングリラを夢見たミリオネア
ジャクリーン・スザン/名声だけを求めたベストセラー作家
ドリス・ウィッシュマン/ソフトコア・ポルノ映画の女性監督
キャンディ・バー/バーレスク最後の女王
コニー・コンバース/消えたフォークシンガー
アンナ・メイ・ウォン/「ドラゴン・レディ」と呼ばれた女優
メアリーマクレーン/悪魔に魂を売った作家


実をいうと、最初の「イディ・ブービーヴィエ・ビール/グレイ・ガーデンズの囚われ人」と「デア・ライト/寂しがりやの人形絵本作家」まで読んだところで、怖くて一度読むのをやめたくなっていました。分布にしてみると、この二人は「依存」が5のツートップ。

だれかに全面的に依存するということは、自分の人生の制御権をすっかり手放してしまうことです。その「だれか」の加護が居心地よければ結果オーライですけれど、ある時点でやっぱり嫌だと思ったころには退路が断たれているなんてことになったら?    それが一番怖いので、わたしならそっち方向の道には入りたくないのです。

逆に、心惹かれた人は誰かというと、読書会でその話題になったときに、わたしがあげたのは「メーヴ・ブレナン/「ニューヨーカー」の孤独なコラムニスト」と「コリータ・ケント/ポップ・アートな修道女」でした。二人とも「独立」が5と高めです。コリータ・ケントに限っては、「社会からの受容(を求める心)」も2と低め。人から受け入れられなくても結構という、いいねを自給自足できる感じにあこがれます。

こうしてみると、わたしの価値観に「独立」って大事だったのだなと気づかされます。一人でいたいわけではないけれど、一人でも大丈夫でいたい。一緒にいるとしても、一人で大丈夫な状態どうしで選んでそこにいたいです。

分布図は、数学を忘れた中年が適当にぱぱっとつくったものですし、あくまで私見に基づく評価なので異論はあると思います。読書会でも言いましたが、「欲・虚栄心 X 依存」の区分に誰もいないけど、本書では所謂ゴールドディガー(金銭のために他の人と交際するひと)も何人か出てくるので、人の懐目当てって依存だよなと思い直したりもしています。