映画を観て感想を話す読書会(鑑賞会?)に参加しました。
課題映画は、マイルス・デイヴィス:クールの誕生(2020)
81bP4T9RwbL._AC_SX342_.jpg 22.84 KBマイルス・デイヴィスは、もちろん、聴いたことはありますが、ジャズについて、たいして掘り下げてきていないので、理論は全然だし、マイルス・デイヴィス自身についても、ほとんど知りませんでした。
ドキュメンタリー映画で、アーカイヴ映像・音源・写真、アーティストや家族・友人などのインタビュー映像。初めて知る内容に、パーカーやら、ギル・エヴァンス、セロニアス・モンクやら、続々登場し、観ているとワクワクします。なんといっても、音楽がカッコいいし。面白かった! 映画で登場した曲のプレイリストをサポーターさんが公開してくださり感謝しかありません。

私の好きな曲ベスト5は、「Round Midnight」「Walkin'」「Milestones」「So What」「On Green Dolphin Street」。しかし、その曲の良さ、かっこよさを言葉で全然表現できない、伝えられない。感想は、もっぱら「ああー」とか「かっこいいー」とかばかり。

映画の中では、ライヴの合間に、ライヴハウスの地上に出て、煙草を吸っているところで、警察官に殴られたというエピソードがあり、実際の血まみれの写真があって、これは、ショッキングだった。何もしていなく、実際そこで仕事をしていて、マイルスのバンドの名前を出ているのに、問答無用で立ち去れと言われ殴られる。すさまじい。とはいえ、「すさまじい時代」と書こうとして、全然、過去のことではなかったんだった。

お宝映像、画像、音源が満載だけれど、よくよく考えると、あまりジャズ自体には触れられていないというか。マイルス・デイヴィスはジャズの中でも、次々新しいものを生み出していったイメージがあるのですが、その辺りの移り変わり、ジャズの歴史、変遷の理屈、背景などには、あまりふれられず、マイルス・ディビスの人となり、人生、周囲の人との関りに焦点が当てられている映画に思いました。
女性の証言も重点的に取り上げらていたし。ただ、せっかくの奥さんとの関係も、酒とコカイン、嫉妬で妻を殴り離婚してしまう。酒と薬は、チェット・ベイカーもそうだったけれど、当時のジャズプレイヤーの体を、命を、人生を痛めつけている。もしかしたら音楽性にプラスにもなっていた部分があったのかもしれませんが。登場している人たちは皆、マイルスに好意的に語り、それは女性たちもで、付き合いにくいところはあっても、この天才を皆、愛していたのだと思うけれど、殴ったらおしまいだよね。これは、冒頭で語られたマイルスの両親の関係とやはり重なっているのだろうか。

映画を観て、1969以降は、聴いたことがなかったことにも気が付きました。マイルスは、一生の中でカラーが変わって、新しい音楽を生んでいた。新しい音楽を追いかけて、メンバーを入れ替え、若手とも組み。あまり1969以降は、私の好みではなかったのだけれど・・・聴き慣れないからだろうか。

読書会には、柳樂光隆さんが飛び入り参加してくださり、各ルームを回って、質問を受けたりしてくださりました。柳樂さんがおっしゃるには、マイルスは死ぬまで新しいことにチャレンジしていた、しかし、そこまで今回の映画には出てこない、遺作はヒップホップだったのだそう。歴史的名盤の扱われ方が、今までとは違うところも特徴で、説明を省く、それは人間を描く方に時間を使いたかったからだろうと。そして、自伝読んでから観ると、あの人もこの人もいないと思うだろう、ぜひ自伝を読んで、また観返すと良いと。

映画中にマイルスの息子が登場し、父親を評して、前のアルバムは置かなかったといっていたけれど、昔の曲を吹くのは嫌がる、演奏したがらなかったタイプだったのでしょうか?と質問すると、そう思う、振り返らなかった人だと思うと。

また、後半、1969年以降の部分で、ロックを批判していたのに、取り入れ、一緒に演奏していたのはなぜ? ロックの構成、曲は否定しつつ、エレクトロニックの音の厚みに惹かれたということでしょうか?と質問すると、批判していたのは白人ロン毛のロックバンド、興味 影響を受けたのは ジミヘン、スライなど黒人ロックバンド、つまり、下手なロックは批判し、上手いロックは認めていたけれど、その辺りの説明が映画にはなく、知らない初見者には、わかりにくいねとも。
マイルスの人となりの紹介として、ウェインショーターが渡辺貞夫を紹介したのに、ジロリと睨んで全然相手してくれなかったとのエピソードもご紹介くださいました。

こちら、柳樂光隆さんの映画レビューの記事です。読書会後の懇親会には、音楽ライターの小室敬幸さんも入られて、すごく予想外、サプライズの面白さでした。もうすぐ、マイルス・デイヴィスの自伝を読む連続読書会もあるのですが、今から楽しみです。https://nekomachi-club.com/events/d703bfb5fb1e