先日参加した読書会、課題本は、駒井稔 /光文社古典新訳文庫編集部『文学こそ最高の教養である』。光文社古典新訳文庫の14冊について、駒井稔さんと翻訳者の方14人が対談する、紀伊国屋書店新宿本店で今も続くイベントを書籍化したものです。読書会に先だって、別に開催された対談も2つ聴講しての課題本読了と読書会参加でした。


対談形式の本は、以前読んであまり合わないと思っていたのですが、今回は課題本も聴講した対談もとても面白かった。イベント後には対象の本がどっと売れるそうですが、その作品が書かれたとき、そして翻訳するときに、どんな背景があるのか、訳者は何を考え、なぜそう訳したのか、そういった周辺を知ることで一層その本を読みたくなるということがあるということを、とても実感しました。

現代使われているわかりやすい口語で訳すことに、過去に読んで気に入っている本などを訳し直されることには、私は当初、若干抵抗があったのです。前に星の王子様読書会をやったときに、新訳の「小さな王子」や「夜間飛行」を読んで、特に解説が充実しているのがすごく良いと思いながらも、でも子どもの頃に読んだ岩波版へのこだわりがあって。加えて、翻訳は原文と一対一なのでは?そこに訳者の個性がそんなにあって良いのか?という気持ちもあったし。しかし今回、この本を読んで、翻訳の過程で原文の持つ背景や、著者の言いたいことや文化の違いなどをどう伝えるか、訳者の方の苦しみや迷い、亀山郁夫先生が綱渡りと言っておられるように、本当、少しでも原文の良さと読みよさを両立されようとしているのが伝わって、これは、読んでみたい、読むかいがあると思いました。

読書会のグループには多くの光文社古典新訳文庫を読んだことがある方、また別訳と新訳の両方を読んだ方もいらしたので、自分の読んでいない本についてや、別訳との違いなどについてもお尋ねできて、大変楽しかったです。

取り上げられている中で読んだことのない本、たとえば「マノン・レスコー」とか「賭博者」「崩れゆく絆」とか、この本での対談、紹介を読んで読んでみたくなりました。マノン・レスコー、オペラと原作でだいぶ違うらしいですし。光文社新訳で読んだことのある本が、私はまだ少ない。「ちいさな王子」「夜間飛行」「死の家の記録」くらいしか読んだことがないので、既に別の訳で読んだことがある本を読もうか、たとえば「1984」や「すばらしい新世界」を新訳で読み直してみるか、それともまだ読んだことがない本中で紹介されていて読んでみたくなった「コレクションズ」「消滅世界」「われら」等を読むかも迷っています。読みたい本が積まれるばかりなので。

読書会が終了後も、たっぷり時間延長して、駒井さんが質問に答えてくださる時間もあって、参加者の皆さんの質問が多岐で、どれへの答えも面白かった。あの文庫の表紙のポップな絵が、全部、画家の方がゲラを全部読んだうえで書いているというのは驚きでした。今後、アジアやアラブやトルコなど、もっと様々な国の文学が新訳で紹介されそうというのもお聞きして、今後が楽しみです。