2021年8月29日の晩夏、読書コミュニティ猫町倶楽部・二村組のオンライン読書会『これはただの夏』(著・燃え殻)が開催されました。
当日は、著者の燃え殻さんを招き、総勢64人の読者がオンラインで集合。5〜6人のグループに分かれて本について語り合う読書会、燃え殻さんへの質問タイム、それぞれで活発な意見が交わされ、夜遅くまで盛り上がりました。

当日の質問やコメントをSli.doで公開しています。
※本の内容(一部ネタバレあり)を含みます。未読の方はご注意ください。
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二村組では、お忙しい中読書会にゲスト出演いただいた燃え殻さんへ、感謝の気持ちを込めて言葉の花束をお送りしたく、猫町倶楽部ラウンジ内でコメントを募集しました。
以下、皆様から寄せられたコメントをご紹介します。

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読書会に参加してくれた皆さん、運営サポーターの皆さん、燃え殻さん、ありがとうございました。

【小説の感想】
「正しい家族」とか「絆」に(もしかしたら「この世」とか「元気に生きていく」ということにも)なじめない人たちを描いた、とても優しい小説だと思いました。  
もうじき自分が死ぬことがわかっている人も、自分がいつ死ぬかわかっていない人(ほとんどの人)も、美しい人も、子どもも、目の前から姿を消してしまうことが人生にはあって、 そういう「やがて消えてしまう人」としか家族になれない人もいる。 
そういう人も「家族のようなもの」を一時的にもったってかまわないし(一時的だから美しいのだということもあるし)、 家族のようなものになるためには契約や出産をしなければならないわけではないのだ、ということを味わえる小説でした。 

【読書会の感想】 
参加してくれた某青年が、著者を目の前にして 「読後まっさきに思い浮かんだのは『主人公みたいなダメな大人になりたくないなー』という思いです」 と言い放ち、それを聞いた著者も真顔でうなずいており、それを聞いていた僕は爆笑しながら「著者を招いた読書会っていいなあ」と思いました。
(二村ヒトシ)



第一印象より、読めば読むほど感じることが増える作品で楽しかったです。質疑応答で、いくつかの質問には解釈でなく、著者からの具体的、かつ意図した心情も丁寧に回答されていて、親切なお人柄を感じました。読書会がとても楽しく、先日の参加を機に燃え殻さんを知りました。ファンとして、燃え殻さんのさらなるご活躍を応援します。
(たで)



燃え殻さんの、ペンネームの感じ。ほんのり温もりがある、何かの燃え残り、みたいな優しさとかろやかさを兼ねそろえた人柄でした。本を書いた人の話を聞くと、本がもっと好きになります。
(たくみん)



cakes連載前(「縦に裂きたい」の頃)からのファンであり、ロフトプラスワンウェスト(大阪)のトークイベントにも行ったことがあり、著作もほぼ持っています(同人誌も)。

読書会で人物の裏設定や出版社との攻防のお話をお聞きして、翌日もう一度頭から読み直し、初読のイメージが鮮やかに覆る稀有な読書体験を味わいました。

この先も、何度も読み返す本になりそうです。
(美鈴)



読書会で裏設定などを聞いてもう一度読みたくなりました。イメージがかなり変わりそうで楽しみです。
(させ)



『これはただの夏』は、人と人との微妙な距離の感覚が描かれているように思えて、とてもよい小説だと感じました。描かれているのは今という時代だけのはかない感覚なのかもしれません。それは確かに私たちが普段生活をしているすぐ隣にあるのですが、微妙ですぐに消えてしまうのです。伝えたくてもうまくできません。

昔の人であればキンモクセイの香りとともに思い出すようなその気持ちを、マックで誰かがフライドポテトをトレーに広げるのをみたとき、いえ、マクドナルドを見るたびに思い出してしまうような気がします。マックはもしかしたらローソンだったかもしれない。マルエツだったかもしれない。向かいの小さな公園かもしれない。

登場するボク以外の人たちは、今もそこにいるような気もします。彼らに「著者に本の感想を書いて送るんだってさ」と言ったら、きっと彼らはそれぞれの口調で何かひとこと言うでしょう。そんなことを考えるくらいに彼らは私の中で生きているような気がします。

ちなみに、私もポテトはトレーに広げる派です。
(おかだま)



著者の燃え殻先生と話が出来たのはとても貴重な体験でした。いろいろな裏話含めてとても面白かったです。
ありがとうございました。
(服部)



紙の本で読みました。読み始めてすぐ、栞に違和感を覚えました。どうも、栞の色が真っ黒すぎるし、幅も広くて、やたら存在感があるのです。
主人公の友人・大関が闘病中ということもあり、小説世界にそこはかとなく漂う死の匂いに、黒い栞はよく似合っていました。
最後のページまで読み終え、違和感の答え合わせができた瞬間、小説世界にワープして彼の襟元に触れているような不思議な感覚がありました。ドキッとさせる粋な装丁ですね!

小説を読み、短い期間だけの関係でも、真夏の炎天下に冷たくて甘いピノを分け合うように、お互いに何かを受け渡せるのだと感じました。
一夏で解散した擬似家族だけど、それぞれの人生が少しずつひらけていきますように。
(みどり)



なんとなくノスタルジックで、夏なのに涼しげな印象がありました。
私の勝手なイメージですが、太陽の光がキラキラしている木陰で、昼寝をして見た夢、というようにも感じました。

登場人物達に共通する普通になれない自分の生き辛さに共感しつつも、私もそれぞれの登場人物も違う存在であるということがよくわかりました。

人との距離の取り方やその維持の仕方、一歩踏み込まないと作れない強い絆、緩いからこその心地良さ、踏み込んだ後の苦しさや責任、などを読書会で考えることができました。

この緩い心地よい関係は、これからも続くであろう生き辛さに付き合い続けならなければならない主人公に与えられた一時の休息だったのかもしれない。それにより今後の人生が少しでも楽になったなら良いなぁと、自分にも重ねつつ期待しました。

アフタートークで裏設定のお話を聞き、それがあったから切なくも美しいただの夏を感じることができたのだなと思いました。
(すえぞう)



「夜のまたたび」を視聴しながら燃え殻さんの身を案じ(かなり疲弊されていたようなので)、発売を楽しみにしていました。
サイン本の発売まで待てず、発売日に購入しました。

なぜか夏に起きた出来事は特別な気がします。
いろんな偶然が重なって、ある一時期ギュッと濃い時間を過ごす4人の夏は「ただの」夏なのか。読み進めながら終始私が感じてきた夏がもたらすあの特別感を感じていました。
ギラギラした夏らしさと違うのに、まぎれもなく夏の感触が残る作品だったと思います。

アフタートークで思いもよらなかった小説の設定や背景などお聞きして、再読の楽しみができました。
とても充実した読書会でした。
(masako)



この読書会に参加して、ファンになりました。
読者の読み方に配慮される燃え殻さんの人柄が大好きです。
「夜のまたたび」を子守唄にして最近は寝ています。
ほかの作品も是非、拝読したいと思います。
ご活躍を応援しています。

テーブル11で参加しました。
『どうかあなたが、あなたを愛し過ぎませんように』
『その瞬間、自分が手に入れられなかったものと、手にしたかったもが、目の前を駆け抜けていったような気がした。』
真夏の白昼夢、陽射しの中の眩暈。そんな読後感でした。
謎を解き明かす喜びよりも、
謎そのものをまるごと抱きしめる。謎に抱きしめられる悦びを愉しみました。
文学の普遍的なテーマである家族、愛、死、孤独の新しい表現に出会えたと感激しています。
(よしうみ)



失礼ながら、読書会の課題本でなければ、読む機会はなかったと思います。
一回読み終わった後、ぼやけたような不思議な感覚(読書会が終わった後の言葉では、「まぼろし」をみたのような)を持ちました。
読書会の同じルームの参加者の感想、燃え殻さんへの質疑応答を得て、自分なりに感じとれたものがあるように思います。
この本に出会えてよかったです。
質疑応答まで丁寧に対応くださり、ありがとうございました。(ken)



本の質感や写真にこだわりを感じました。
本を読む前に、写真からどんな内容か想像していました。
読み始めると、ずっと、文章にドキドキ、胸がキュンキュンしっぱなしでした。
内容や目次について誰かと話したくなる本です。

読書会で、参加者の皆さんと疑問に思ったことについて考えました。
疑問について、文章を読み直して、考えて、意見を伝え合うのはとても楽しかったです。

本を読んで、燃え殻さんのファンなりました。
燃え殻さんにお話を伺って、より燃え殻さんのファンになりました。
(あや)



今回初めて燃え殻さんの著書を読みました。(買ったのは初めてではないんですが苦笑)
時間的に長い関係を結ぶだけが人間関係ではなくて、ひと夏の一瞬の交差の中にあるものが、人を救うこともある、その大切さや切なさが、登場人物の心理をあえて説明しない言葉の後ろに隠されてる感じがなんとも上品な感じがしました。よい小説を読ませてもらいました。二村組に感謝!
(猫町倶楽部代表・山本多津也)



燃え殻さん、ありがとうございました!(参加者一同)