短編読書会は初めての参加でしたが、語る時間は話の長短には左右されないことを実感しました。
とても楽しかった!
同じテーブルになった皆様、ありがとうございました。

メモや感想など、つらつらと。

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① 読書会で話されたことのメモの一部。

● 門番のいう「おれはこのとおりの力持ちだ」の「力持ち」は英語だと「powerful」だった。
 →腕力的な強さか? 権力という意味の強さか?
● 門番は自分自身。
● 道理とは、皆が歩く人生の定番コース。不条理によって生み出された個人。
● 男にとって門番の隣が一番心地いい。
● 不条理とは? 
● いまのメイドインジャパンのファンタジーは異世界に飛ばされることが不条理ではない。

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② 読書会後の感想のようなものと、あまり話せなかった(話しそびれた)疑問。

● 『掟の門』というタイトルに引っ張られているけど、「門」よりもその先にある「掟(訳によっては道理や法律)」と「門番」がファクターとして重要であると思う。訳によっては「掟の前で」「道理の前で」であるし。

● 英語で読むことについて。『変身』の英語版のまえがきで金原瑞人氏が「ヨーロッパ言語の作品は日本語訳より英訳のほうがオリジナルに近い。」と書いている。なるほど。「powerful」が「腕力」なのか「権力」なのか? 選択する言葉によってまったく違う(その点で読むなら、光文社の「おれには力がある」は良訳か)。訳者のフィルターが通されてしまう(作者の意図から遠ざかる?)。日本語で読むことは不利?

● 門番は最後に「この門はおまえひとりのものだった」と種明かし。不条理? コレは不条理? 男は自力で突破できる可能性もあったが、その努力をしなかった、与えられて当然の顛末か?

● 『訴訟』では、ある日とつぜん逮捕されたヨーゼフ・Kが、終盤に出会う僧侶から「法律の門」について説法される。ここでは門番は頭が悪く、うぬぼれであり、門の内部について門番自身が怖がっているとされている。その上、法律の門はいつものように開け放たれているから門番は門を閉められないらしい。もしかしたら門番は、「powerful」ではない?

● (個人的には作者のバックグラウンドを検討しながらの小説読解はしたくないが)門の前でグズっていた男の立ち振る舞いは、カフカの人生がどのように影響しているか? 同一人物と二回婚約し二回とも婚約破棄している点(その後で婚約した別の女性とも婚約破棄している)、結核を患っていた点、ユダヤ人であった点など。

● ぜんぜん関係ないけど、落語の「死神」を思い出した。

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むかし読んでもピンと来なかった作品が、今回はいくらでも思考を巡らすことができて楽しかった。読み返すことの醍醐味ですね。

個人的には、男は門番から「ここを閉めるぞ」と言われた後、目を見開いて力を振り絞って、無理矢理に門の向こう側へ入る展開だといいな、と思う。掟の中へ行くことが男の望みなら。

いけ、男。
がんばれ、男。