2022年10月に正式に発足した洋書読書会は柴田元幸さんに選書していただき10か月にわたって読書会を行ってきました。2023年8月からは鴻巣友季子さんの選書で第2期に入り、10作品を1年かけて読んでいきます。
(1)開催概要報告
日時:2023/8/17(木)20:30~22:15
課題本:Kat Howard, "A Life in Fictions"
参加者:21人
第2期第1回は8月17日20:30から課題作品 Kat Howard, "A Life in Fictions" でオンライン開催されました。
参加者は全部で21人、夏休みの方も多いのかいつもより少なめです。7人ずつ3つのブレイクアウトグループに分かれて読書会をしました。はじめて洋書読書会に参加される方が毎回いらっしゃいます。今回も4人くらいの方が初めてでした。
よく聞かれるのですが、洋書読書会だからといって特別なことを話すわけではありません。読書会は日本語で行われています。作品の感想、好きだったところ、気になるところ、分からなかったところ、登場人物について、など話題は多岐にわたります。
課題作品の"A Life in Fictions"は邦訳されていませんが短い作品です。鴻巣さんは「ある女性が恋人の男性小説家の作品モデルになるうち、現実での存在実態を少しずつ切り取られ、虚構世界に消えていってしまう」話と要約されています。読書会では参加者同士で話し合いながら様々な解釈を考えました。
参加者の意見・感想をいくつか紹介します。
・『世にも奇妙な物語』みたい。
・ この作品に描かれる「芸術家とそのミューズ」という関係性にあてはまる例は多い。
・何が現実で何が幻なのかわからない幻想小説のような怖さ。
・「信頼できない語り手」なので精神を病んだ女が別れた男に妄執してるようにも読める。
・コーヒーの好みなど些細な事柄を(喪失してしまう)アイデンティティの表現とされてることにさみしさを感じる。
・主人公は「ゆるやかな自殺」を選んだとも解釈できる。
・曖昧な現実世界を捨てて彼の物語の中で生き続けることを選んだというポジティブな読みもできる。
・主人公は搾取されている一方で、ふたりは共依存のような関係にも見える。
・ 一人称で本作を綴っている主人公の彼女は現在どこにいるのだろうか?
・冒頭の一行 "He wrote me into a story again.”のwrite...into...をどう訳す?描きこむ、綴る、織りこむ、など色んなアイデアが出た。
・「人生のリソースを奪われ心神喪失になってしまった女性は客観的に事実を告発することはまずできない」という現実の実態を反映して、本作はあえて語り手の信頼度を下げパラノイア的にも見える書き方をしているのでは?
最後に参加者全員で集合写真を撮りました。
(2)読書会の当日の流れ
①受付~オープニング
・Zoomに繋いで受付が完了したら待機部屋で開始時間まで待ちます。
・「おしゃべり待機部屋」という部屋にはサポーターがいるので、読書会の内容やZoomの操作について、何でも聞いていただけますので、初めての方も心配する必要はありません。
②読書会
・開始時間になるといったん全員が集合して、猫町倶楽部の読書会ルール(たとえば「人の意見を否定しない」)などを司会役のサポーターが確認します。
・Zoomの自動割り当て機能を使ってランダムに作られた5~8人のブレイクアウトルームに移動して、いよいよ読書会の開始です。
・読書会の進め方は、簡単な自己紹介のあと、作品全体の感想を参加者全員に聞いてから自由にディスカッションすることが多いです。
③クロージング~懇親会
・読書会終了後、オープニングと同様に、再び全員が集合します。次回の読書会の課題本のアナウンスなどがあり、読書会本編は終了です。
・話し足りない方は、引き続きオンラインで懇親会に参加することができます。20時半開始の場合、懇親会の終了は23時となります。
※洋書読書会に関して、よくある質問
Q:英語で行いますか?
A:課題本は洋書ですが、読書会は日本語で行います。
Q:英語は自信がないのですが、どのくらいのレベルから参加してもいいのでしょうか?
A:高卒相当まで英語を学び、その後は英語に密に触れる機会はなかったけれど、これを機に努力して主に大人向けの小説などを英語の原書で読了してみたいという意欲のある方であれば大歓迎です。またこの読書会の目的は本の内容(ストーリーや登場人物の心情など)についての感想を話すことで、一言一句の理解や、英文読解・英文解釈のような精読を求めてはおりません。読み進めるにあたり、翻訳版や解説書などの力を借りて頂いても結構です。
(3)今後の読書会予定(鴻巣友季子さんによる選書)
次回9月19日(火)は、カーソン・マッカラーズの「結婚式のメンバー」を読みます。版にもよりますが160ページほどあるので、9月はページ数にして約半分までが課題です。
みなさんのご参加をお待ちしています。
https://nekomachi-club.com/events/fd59de6fbda4
10月:Carson McCullers, "The Member of the Wedding" Part 2の2章から最後まで
11月:Margaret Atwood, "Torching the Dusties"
12月:Louise Glück, "The Wild Iris"
毎月20日前後の開催で、前月末までには日程が確定してイベントページが公開されます。
詳しくはこの課題本紹介ブログをご覧ください。
https://nekomachi-club.com/blogs/c94613b4774c