「猫町.」主宰のタツヤさん曰く「新しい読書会の目玉企画の一つ」というこのシリーズ、6月27日(土)に第2回が開催されました。今回も戸谷洋志先生によるレクチャー付きで、レクチャー+質疑応答の後に1時間ほどの読書会という形式で行いました。
この日は7号と8号のW台風が接近した影響で大阪オフライン会場での開催は危ぶまれていましたが、前日の夜から台風は少しずつ南に逸れていき、夕方ごろには雨も上がってちょうど過ごしやすくなっていました。
運営側としては、初回で『人間の条件』の覇気にやられて一気に参加者がいなくなることも危惧していたのですが、イレギュラーな時間の変更や中部~関東方面では直撃していたはずの台風の影響を受けつつも、大阪オフライン/オンラインの参加者あわせて60名ほどが参加していました。
オフライン会場について
今回も大阪のオフライン会場はこちら。「小さなお庭と猫の図書館」さんをお借りしました。会場のお庭には緑が溢れ、中にはあちこちに猫ちゃんグッズが置かれています。雨があがってしっとりとした空気の中で、薄青い紫陽花が目を引きます。季節や時間や天候によっても色合いや雰囲気がガラッと変わっていて、毎月のお庭の様子も楽しみの一つになっています。
レクチャー開始!
いよいよ第2回のレクチャーが始まります。毎月1章ずつ読んでいくため、今回の範囲は『人間の条件』第2章「公的領域と私的領域」です。今回は戸谷先生はZoomでのオンライン参加でした。
『人間の条件』を読んでいて、そしてレクチャーをお聞きしてあらためて感じたのは、私たちが日常生活で使っているのと同じ言葉でも、哲学書を読むときにはそれをいったん忘れて著者自身の定義を受け入れて読む必要があるということでした。
人間が作り出した人工物で構成されるものとしての「世界」や「歴史」、「社会」がその成員を均質化してしまう圧力からの避難場所としての「親密圏」、固定された居場所を持ち神聖なものとしての「財産」と使用され消費されるものとしての「富」、etc、etc......
古代ギリシャから、中世を経て、近代以降へといたる歴史的な変遷をレクチャーの中で図に起こしてくださっていたのも大変助かりました。一人で読んでいたらまずこんなにすっきりと図式化できはしませんでした。
質疑応答の時間では私も、西洋近代に出現した「社会」というものが日本においてはどのように現れてきたのか、という質問をさせてもらいました。アーレントがある種の憧憬をもって描いた直接民主制の古代ギリシャですが、日本の社会をいくらさかのぼったところでそのような公的領域と私的領域の画然とした区分は存在していなかったはず(とくに公的領域)。では日本で生きている私たちはどこに立ち返ったらよいのか。想像しづらい、難しい問題だ、と。そう、そうなんですよね。これはあと4回の読書会での私の隠れテーマにしておこうと思います。
そして読書会へ…
前回の第1章は全体のガイドラインのような役割も持った章でしたが、第2章ではより具体的な議論へと入っていきます。
古代ギリシャでは画然と区別されていた私的領域と公的領域に「労働」や「活動」の居場所がそれぞれ割り当てられていたが、中世にはキリスト教の隆盛にともないそれらが世俗の側に押し込められ、近代になり宗教が衰退するとそれらが一つになって社会となる。この歴史的なプロセスがつぶさに語られていて、いよいよ本題に入っていったような趣。やはり難しいですね…
最後の第10節「人間の諸活動の位置」では善行の話が出てきます。私的領域と公的領域の区別について「そもそも存在するためには隠さなければならないものと、公に見せるべきものがある」とアーレントは言い、そこから、以下のような文章につながっていきます。
善き行いは、何かを目的とするのではなく、ひたすら善のためにのみなされなければならない。善行が公然と姿を現す時には、組織的な隣人愛や連帯のための行為としては有用かもしれないが、それはもはや善行ではない。「人前で施しをして、それを
見られないように用心しなければならない」。善が存在しうるのは、誰にも知られないとき、本人でさえ気づかない場合だけである。自分から意識して善行をなす人はもはや善人ではなく、有用な社会の構成員か従順な教会の信徒であるにすぎない。だからこそ「汝の右手の為すことを左手をして知らしむるなかれ」とイエスは言うのである。
参加者のみなさんもこのあたりが評判が良くて「一番面白かった」、「むしろ唯一理解できる文章だった」などの声が上がっていました。しかし、直前のレクチャーで戸谷先生からこの節について「ここは正直、『人間の条件』の中でかなり浮いている箇所です」「ぶっちゃけ言うと読まなくてもその後の議論にあまり影響がない箇所です」などの非情なお言葉があり、私がいたテーブルでは読書会パートは苦笑いスタートでした。ここの話たくさんしようと思っていたのになんてことを言うんや…
難しくて分からない箇所もおおかったですが、やはり事前のレクチャーがあると読んでいて分からなかった箇所についての理解も進むし、話すネタが尽きることもないし、今回もとても良い回になりました。
そしてオフライン参加組は大阪の夜へと消えていくのでした…
以上、読書会開催レポートでした。
残り4回、楽しんで『人間の条件』を読んでいきましょう~


