今回は、年に一度の恒例企画「浴衣読書会」。
梅雨明けの夏本番を感じさせる暑さのなか、京都梅小路公園・朱雀の庭を広く見渡すことができる「緑の館」の和室にて開催しました。
https://nekomachi-club.com/events/16b5b100b959
今回のドレスコードはもちろん「浴衣」。
普段、和装をする機会はめっきり減ってしまいましたが、年に一度、こうして日本の伝統文化に身を包むと、いつもより少し背筋がピンと伸びるから不思議ですね。
毎年欠かさず参加してくださる方はもちろん、和装が好きで遠方から遠征してくださった方、お友達を誘って来てくれた方、そして今回が初参加という方まで、総勢19名が集まってくださいました。
年齢もバックグラウンドも異なる様々な世代の方々が、色とりどりの浴衣姿で和室に集う空間はそれだけで華やかです。窓の外に満開に咲き誇る百日紅の鮮やかなピンクと庭の緑が、落ち着きと気品のある素敵な雰囲気を演出してくれました。
今回の課題本は、岡倉天心『茶の本』。
岡倉天心といえば、学生時代に教科書でその名を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。『茶の本』というタイトルから、単なる茶道の解説書だと思いそうですが、読み進めるとその本質は全く異なることに気づきます。明治期に英語で執筆され、世界に向けて東洋の精神や日本文化の美意識を説いています。そして、出版から120年が経った今だからこそ、日本が誇るべき精神の贅沢さを再認識し、現代の生き方を見つめ直すきっかけをくれる一冊でもあります。
当日は、初参加の方も緊張することなく、それぞれの感想をたくさん共有してくださいました。あまりの盛り上がりにメモを取るのを忘れてしまうほど。 その一部をご紹介します。
「最後の一文がとても心に響いた。天心はこの一文のために本書を書いたのではないか。『顔に満面の笑みをたたえて利休は未知の世界へと旅立っていった』茶人利休の壮絶で美しい最期を語ってしめくくられる本書。『生を美しく生きた者だけが、美しく死ぬことができる』死は生の完成であり、至高の芸術であるという言葉の重みをみんなで語り合えてよかった。」
「千利休の潔いエピソードを読んで、元特攻隊員であり出征前に隊員たちにお茶を振る舞われていたという、裏千家前第15代家元の千玄室さんのエピソードを思い出した。」
「東洋の文化、日本文化に対する岡倉天心の熱い想いが込められているように感じた。」
「原著が英語ということもあり、日本文化を知らない西洋人向けにどう英語で表現していたのか、関心が向きました。特に利休の辞世の句は翻訳者の訳が全く違うことに驚き、原著はシェークスピア的。」
「現代の日本文化へ広がる対話」
また、今回は『茶の本』にちなみ、本の内容だけに留まらず、私たちを取り巻く「お茶の文化」そのものにも話の花が咲きました。日本茶の良し悪しや、ペットボトルの普及によって急須で煎茶を丁寧に淹れるという日常の習慣が廃れつつある現状について、それぞれの実感を語り合う場面も。
さらに話は「現代における芸術の意義」へと発展。日本の伝統芸術や芸能、工芸の分野における伝統と革新のリアルな現況から、その伝統の技を影で支える裏方産業にまで深く話が及びました。
本の内容を深く味わうことはもちろん、そこから触発されて、私たちが生きる「今の日本の文化」を改めて足元から振り返り、語り合うような、とても貴重で有意義な機会となりました。
「茶室建築の美学から、現代の私たちが学ぶこと」
また、別のグループで白熱したのが、「茶室という空間が持つハック術」についてでした。
茶室は、外界から遮断された「非日常の空間」です。待合から露地を通り、四季折々の自然を感じながら茶室に入るまでの時間と空間のすべてが、人間の集中力を高めるために計算し尽くされています。余分な装飾を極限まで省き、引き算をするからこそ、目の前の一要素(今、ここ)に深く没頭できるのです。
この『茶の本』の教えは、「忙しすぎる現代人」へのアンチテーゼではないでしょうか。
私たちは今、食事をしながらスマホを片手に情報を追い、音楽やニュースを聴きながら別の作業をします。膨大な情報に常に追われ惑わされ、日常の些細な幸せや季節を感じる「丁寧な暮らし」が難しくなっています。
だからこそ、茶室建築の「目の前の物事に100%集中させる空間づくり」の考え方を日々の生活に少し意識して取り入れること。何気ない日常の現実をかけがえのないものとして存分に味わうことは、ストレスフルな現代社会を健康に生き抜くための、「ライフハック」になるという気づきを与えてくれました。
情報化と効率化の波に追われる現代だからこそ、いま、私たちの心にはこうした「余白」が必要なのかもしれません。
日常を美しく生きるための引き算の哲学。
そんな「一杯のお茶から、心に美しい余白を取り戻す」という天心の精神を体感するべく、今回は読書会の前に「お茶会」も催しました。
普段からお茶を嗜んでおられる方も、今回初めてお茶を点てるという方も、夏の盛りの美しい庭園を眺めながら、少し苦戦しつつも自分でお茶を点てる体験を楽しみました。ゆったりとした時間が流れ、お茶を通じて自然と会話が弾む、とても温かいひとときとなりました。
そして今回、この読書会のために、特別なオリジナル和菓子をご用意しました。
和菓子店「青洋」さんにお願いし、『茶の本』の思想から着想して作っていただいた生菓子です。
本作のキーワードである「不完全の美」「非対称性」「命」「限られた一瞬」これらから導き出された「朽ちる美」や「自然美」を、7月の茶花のイメージで「白の木槿」の花に重ねてかたどっていただきました。素材には、千利休が好んだとされる「麩」の焼きを使い、中には味わい深い白味噌餡が包まれています。天心の哲学を五感で味わう、まさに精神の贅沢を体現した格別なお菓子でした。
天心が『茶の本』で「何もない空間(余白)があるからこそ、そこに新しい美や客人の心が入り込むことができる」と説いたように、猫町プラスの読書会もまた、お互いの意見を認め合う「心の余白」を何よりも大切にしている空間です。
だからこそ、年齢や職業に関係なく、誰もが安心して自分の感じたまま、思ったままの言葉を自由に話し、その余白を満たしていくことができます。
「本が好きな仲間と世代を超えてつながりたい」
「最近、スマホばかりで深く考える読書(=心に余白を作る時間)ができていないな」
「他の人の視点を通して、本が持つ新しい魅力を発見したい」
そんな風に感じている方は、ぜひ一度、私たちの読書会に来てみませんか? 初参加の方でもすぐに馴染める温かい雰囲気でお待ちしています。新しい本、新しい人々、そして新しい自分との出会いが待っています。
効率や正解ばかりを求められる日常から一歩離れて、一冊の本を真ん中に、「余白」を味わってみませんか?
Photo by寺田さん
今回のレポートに掲載している美しい写真は、寺田さんに撮影していただきました。
浴衣姿のみなさんの笑顔や、繊細な和菓子の表情まで、当日の素晴らしい空気感がそのまま伝わってくる写真ばかりです。素敵な写真をありがとうございました!
次回開催のお知らせ
日時:2026年8月22日(土)16:40〜
課題本:渡辺祐真 『空海読んだら、人生変わった 思考をひろげる仏教入門』
会場:ビストロ酒場YUZU cafe&bar 北浜本店
https://nekomachi-club.com/events/e74914b1e89a
みなさまのご参加を、心よりお待ちしております!

2026/07/20 07:00
【開催レポート】関西オフライン読書会(2026年7月11日)


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