VI. 映画の外側から呼び覚まされる、自分自身の記憶
全6回にわたって書いてきた猫町シネマ『覇王別姫』感想会の記録も、いよいよ最終回です。今回は少し趣向を変えて、参加者それぞれの記憶にこの映画がふと触れた瞬間についての話です。
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記憶がふとこの映画に繋がる瞬間。
大学で「日本文化論」という名前なのに実際は中国文化論をやっていた授業があって、それがそもそも尖っていたんですけど(笑)。大学時代の教官に、中国古典文学が専門の、結構面白い先生がいて。その先生がやたら日本語字幕もない京劇の映像を流すという、ちょっとカオスな授業があったんですけど、その先生は中国によく行かれていた先生で。研究室がもう中国そのものみたいな感じで、めちゃくちゃ好きな先生だったんですけどね。その授業の中で、NHKの京劇のVTRのようなものを見て、その中で『覇王別姫』がまだ広く知られていなかった頃の映像が一部登場してきて。子役たちが劇団を抜け出して京劇を観て心を打たれる、というシーンが流れたんです。それがきっかけでこの映画に興味を持ちました。演じている方にも人生があるんだなと思って。
俳優や作品同士がふと重なる既視感。
チャン・イーモウの映画は『HERO』観たことあります。あと『菊豆』とか『紅いコーリャン』も話題になりました。この画面左下の『活きる』、ピンと来た方もいると思うんですけど、以前、猫町で一度課題本になったことがあった原作なんです。この『活きる』の主役がコン・リーで、コン・リーの旦那さん役をやっているのが、今回の袁四爺、京劇のパトロンをやっていた少し癖のある男性で。全然違うキャラクターで面白いんですよ。あの人(袁四爺役の俳優:葛優)の作品は他にも何本か観たことがあります。
香港映画は去年猫町でウォン・カーウァイ特集を3本やって、『恋する惑星』と『花様年華』と『ブエノスアイレス』(レスリー・チャン主演)はやったんですよ。
映画『国宝』の話も少し出て、コン・リーの最後のあの表情と重なる部分があってちょっと驚きました。こんな符合があったんですね。
中国の「見た目」をめぐる遠い記憶とオリエンタリズム。
メイクが綺麗だなと思ったんですけど、あのオリエンタルなメイクの流れって、70〜80年代にこういう赤の特徴的な使い方が流行っていたなと思って。坂本龍一のメイクは、デヴィッド・ボウイと共演していたから、その影響かなと思います。あと山口小夜子も似ていますよね。──山口小夜子さんって京劇から来ているんですかね。──日本の伝統というよりは、パリコレの方ですよね。流行通信の表紙は、石岡瑛子さんのアートディレクションなんですけど、これは京劇をモチーフにしたと言っていました。
人民服っていつ頃から広まったんでしたっけ。──80年代くらいには、『らんま½』で人民服を着ていたんです。──『ドラゴンボール』の最初の頃の感じですね。──日本から見た中国のイメージも、経済開放路線になってからガラッと変わった気がしますね。──(人民服は)でも、最初は歓迎されていたのかと初めて知りました。──日本から観光に行った人も、喜んで着ていましたよ。高校の先輩が中国旅行から帰ってきて、教育実習で高校に来た時に着てきていましたよ。当時は円と元にすごく価格差があったので、平成の初め頃までは中国は物価がすごく安かったと思います。
私が今住んでいる関東のあたりで、劇団を持っている知人がいて、本当に毎週のように土曜公演を打っているんですよ。その子が「舞台の上の方が本当の人生であって、俺たちにとって現実なんかどうでもいいんだ」みたいなことを言うんですよ。かっこいいですよね。実際は今、その中心メンバーの人は普段は演劇とはまったく関係のない仕事をしているそうで、少し前までは別の地方で季節労働のような仕事をしていたって言っていて、芸のためになるなら何でもいい、みたいな。すごいなと思いますよ。舞台の上が本当に人生、みたいな人もいるんだなと。「舞台に殉じる」というやつですね。舞台に殉じて、愛に殉じて、という感じがしますね。
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こうして振り返ると、この感想会には二つの軸があったように思います。
ひとつは、蝶衣たちの生き方や絆をめぐる、映画そのものの感情軸。
もうひとつは、歴史の重みや演出への驚き、自分の記憶が呼び覚まされる余白といった、鑑賞する側の体験軸です。
ところで駒井組読書会(2021/6/20)や、コン・リーと袁四爺のところで話題になった
『活きる』という作品ですが、
メンバーの方の感想ブログが残っていたので紹介します。
【駒井組】活きる
https://nekomachi-club.com/blogs/783902f7fad6
余華『活きる』
https://nekomachi-club.com/blogs/ba80d335937b
【駒井組】6/20(日) 余華,飯塚容訳『活きる』(中公文庫)
https://nekomachi-club.com/blogs/2c11ccb09ac5
『覇王別姫』感想会の記録は、これで終わりです。長い連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回の猫町シネマは9月8日(火)、課題作品はレスリー・チャンのもう一つの代表作『欲望の翼』(1990年、ウォン・カーウァイ監督)。
それでは来月またお会いしましょう。
https://nekomachi-club.com/events/2c4bdb8d9b95


