V. 演じる身体・声への職人的な眼差し


5回目は、演じる身体や声について出た話です。指先の演技から宝塚版との比較まで、細部に目を向けた回になりました。


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手の演技。
劇団に入る前に6本目の指を切るじゃないですか、あそこって『覇王別姫』独自のエピソードなんですかね。あれは小指の方にもう1本ある感じですよね。あれ実はミスで、本当は最初、親指に多指症があったはずなんですけど、切るシーンでは絵面が悪いから小指に変えちゃった、という話があるらしいです。撮り直さなかったのがすごいですね。演技上、こういう動きをする時に指使いが目立ちますよね。男も女も性別を表現するときに手ってすごく大事で、宝塚も男役の人は手が大事なんですよね。男役の人が写真に写る時によく手を出したりするので。


宝塚との照らし合わせ。
これ(宝塚作品)見てもらいたいんですけど、ちょうど項羽と虞美人の戦いのシーンを、四面楚歌の故事に本当に忠実に再現したミュージカルで。これを観ると、覇王と虞美人の愛や、四面楚歌に追い詰められて虞美人が死を選んでいくところが、すごくドラマチックでおすすめです。今回の映画のみならず、こういう故事のエピソードや、項羽と劉邦のエピソードはあちこちで演目になっているので、教養として知っておくといいのかな。三国志を描いた漫画も、歴史の記録通りに丁寧に描かれていて、その周りの武将たちの活躍とかも描かれていて、中国の古典を知っておくと、いろんなところで繋がってくるなと思いました。今回の映画も、四面楚歌の話や項羽と虞美人の話を知らないと深みが全然違うので、これはわかりやすくておすすめです。

この京劇の衣装ってめちゃくちゃ大きいんですけど、宝塚もご存知の通り、後ろに大きい背負い物(背旗)をつけるんですよね。

宝塚でこの演目を上演するとき、劇中歌って実際に音楽として流すんですか。──セリフとして「時、利あらず、騅(すい)逝かず」みたいなものはそのまま言っていましたけど、それをベースにオリジナルの歌詞を作っています。中国風の音楽もほぼオリジナルで作りました。──楚の歌って残ってないんですね、実際の記録に。──ええ、残っていないですね。物悲しい歌だったと言われているくらいで。あの、項羽は剣を2本持つのがトレードマークなんですか。他の武将は皆1本なのに、項羽だけ剣を2本持って戦って、その 2本の剣でさいごに虞美人が舞って自害するっていうシーンがあって。──さすが宝塚、何でもやりますね。──初演の頃(50年ほど前)は、舞台上に本物の馬が乗ったそうです。


声とことばが運ぶ、もうひとつの意味。
Google翻訳で中国語読みするとどう発音するのか、名前にこだわって調べてみたんですけど、四声なので、中国語だと高低のイントネーションがあるんですよね。それに引っ張られると、普通に会話していても、なんだか歌うような喋り方になっちゃうんですよ。でもメロディーが意味を表しているんですよね。

項羽が乗っていた馬に「騅(すい)」という名前がついていて、その馬が走らなくなってしまう、というエピソードが自刃の場面に書かれていて、いきなり名前を取られてただの「馬」になっていて、個人的にちょっと面白かったです。これ、翻訳はやっつけ仕事だったのかもしれないですね。あの時代、ほとんど一人でたくさんの映画を訳していたらしいですね、映画字幕。

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映画そのものの話は、ここでひと区切りです。最終回は少し趣向を変えて、参加者それぞれの記憶にこの映画がふと触れた瞬間について。授業の思い出や、他の作品との既視感、舞台に人生を懸ける人たちの話まで出ました。