秋の気配を感じられるようになった10月下旬、大阪にて伊藤亜紗さん著『身体の美学入門 - 感性から捉えなおす人間の本質』を課題本にした読書会を開催しました。
普段、何気なく使っている「美しさ」や「心地よさ」、あるいは「ちょっとした嫌悪感」。そうした感覚はどこからやってくるのでしょうか? 一冊の本を真ん中に置き、自分たちの身体や実体験と照らし合わせながら語り合いました。
https://nekomachi-club.com/events/d854773c2c07
■ 課題本:伊藤亜紗『身体の美学入門 - 感性から捉えなおす人間の本質』(中公新書)
「美しい」と感じることも、「なんとなく嫌だ」と目を背けたくなることも、私たちは日々、身体というセンサーを通して世界を受け取っています。しかし、その感覚は本当に「自分だけの純粋な好み」なのでしょうか?
見る、触れる、感じる、動くといった身近な身体経験を出発点に、感性のはたらきを知る一冊です。社会が作る規範や「こうあるべき」という無意識の物差しに、私たちの感性がいかに侵食されているかに気づかせてくれます。
■ グループトーク
一人で読んでいると「なるほど」と納得する一方で、自分の過去の体験や違和感がふつふつと湧き上がってくる本書。各グループでは、本の内容をベースにしながらも、個人のリアルな体験や現代社会への視点へと話題が広がっていきました。
●「綺麗」と「かわいい・かっこいい」
「綺麗である」という評価は、一定の規範を共有した集団の中では一意に定まりやすい一方で、「かわいい」や「かっこいい」はより主観的な評価であり、一意には定まりにくいのではないかという話題が出ました。
●スタイルと社会性、個性とは
自分の「スタイル」や個性は純粋に内側から湧き出るものだと思っていたけれど、実は社会的な基準があってこそ現れるもの。社会的な規範があり、そこからはみ出たものが「個性」や「個性的なスタイル」と称されるのではないかという意見に共感が集まりました。
●人間の知覚とAIの違い、そして「同じ空間にいる」意味
「AIは膨大な情報からの推論でそれらしい答えを返してくれるけれど、身体を持たないため『知覚』することはできない。知覚できるのは人間だけだ」という深い考察から、「同じ読書会でも、オンラインとオフラインで感じる空気感の違いはどこから来るのか?」という問いへ。
ある参加者からは、「ライブ会場で、知らない人と手を繋いでウェーブを起こしたとき、最初は本当に盛り上がるのかなと思ったけれど、同じ空間で同じアーティストの高揚感を身体で共有した瞬間、その波動が会場全体に広がっていった。直接的な身体接触や空間の共有によって、自分の身体が周囲に反応し合っているんだと感じた」という素敵な体験談が共有されました。
●私の中の他者としての身体、身体が発する「言葉なきサイン」
過去に極端にダイエットにのめり込んでいた時期があり、特別太っているわけでもないのに「痩せなければ」という衝動に駆られていたというエピソードも。「でもある時、ふとある栄養素(サプリメント)を摂取したところ、強烈だったダイエット欲がぴったりとなくなった。頭で『こうあるべき』と考える前に、身体がすでに訴えていた。無意識下で身体が求めていたサインが、言葉にならない衝動や反応として現れていたのだと気づいた」と語られました。
●「知覚」から「再認」へ、大人のうっとり体験が減る理由
第5章「対象との出会い方(知覚と再認)」に関連し、「年々『うっとり』する体験が減っているように思えるのは、年齢を重ねるたびに初見の『知覚』の出会いが減り、すでに知っているものとして処理する『再認』の出会いが増えてしまうからではないか」という分析がなされました。
●デジタル社会と効率化がもたらす「降伏」の体験への影響
対象への「降伏」という経験は、直接体験の中でこそ起きやすいもの。しかし、スマホの普及などによって直接体験の機会が減り、未知との出会いが軽んじられているのではないかという声も。旅行などで事前に準備をしすぎて、当日の行程が確認作業に堕してしまったり、映画の流し見をしてしまったり普段の生活では出会いを軽んじてしまっているのではないか、といった日常の振り返りが行われました。
■ドレスコード&ベストドレッサー
今回のドレスコードは「美」!
参加者の方の個性溢れる感性が表現された「美」のアイテム、エピソードが集まりました。
●大好きな「アルフォンスミュシャ」をイメージした優美なコーディネート
●本書「鏡としての感性」より、「スズランの刺繍が美しい手鏡」
●なぜか惹かれる質感、私の好きな「牛乳石鹼赤箱」!
●美と言えば三島由紀夫『金閣寺』
選ばれたベストドレッサーのみなさま、おめでとうございます!
読書会を終えて…
10月の連休にチケットを頂いていたこともあり泉屋博古館の寛永行幸四百年記念特別展を観に行ったのですが、ふらっと入った常設展「中国青銅器の時代」があまりにも良かったのです。
青銅器に対しては、現代の私たちが持つ「こうあるべき」という社会的なバイアスや美の判断基準はおそらくありません。その時、初めて青銅器を目にして感じた、言葉にできない惹かれる感覚、引き込まれて時間が止まるような感覚…。あれこそが、純粋に青銅器に魅せられた知覚の体験であり、身体と感性が直接ぶつかり合った瞬間だったのではないかと読書会を振り返り思いました。
ここで難しいのが、魅せられた感動をどのように伝えるかです。知覚や身体で感じた反応を言語化することは本当に難しい。初めての、なんと表現していいかも分からない反応を、どのように言葉にし、他者に伝えるのか。表現できる言葉のストックがなければ伝えることは難しいし、感じてすぐに言葉に変換できるわけでもありません。(中国青銅器って本当に不思議で魅力的なんですよ!)
実際、読書会中に「最近うっとりした経験は?」と問われた時、私はこの青銅器の体験をすぐには思い出せませんでした。「うっとり」という言葉と、青銅器に魅せられたあの身体の反応が、すぐには結びつかなかったのです。感覚と言語が結びつくには時間がかかることもあります。
しかし、感じたことを表現する手段は言葉だけではないということもこの読書会で体感しました。反応は常に身体に現れます。青銅器展の体験を思い出したのも読書会後の懇親会での会話がきっかけです。美術展の話しになり、「ふと訪れた青銅器展がすごく良かったです」という会話の中で、上手く言葉で表現できていなくても、私の話し振りや身体に現れる反応から、会話の相手の方は私が中国青銅器に魅せられたことを感じ取ってくれました。
帰宅後に読書会の事を振り返っていると、本の内容と懇親会の会話、そして青銅器展の体験がすっと繋がりました。おそらく一人でこの本を読んだだけでは体験できなかったことです。
本を通して、同じ空間を共有することで、言葉を超えて伝わる空気感や熱量、その場で生まれる思いがけない会話からの気づき。読書会という場に、わざわざ直接身体を同じ空間に置く意味は、まさにここにあるのだと改めて実感しました。
参加者の皆様ありがとうございました!
■次回のご案内(関西オフライン読書会)
日時:11月28日(土)16:40〜
課題本:ガルシア・マルケス『エレンディラ 新版』 (ちくま文庫)
開催場所:ビストロ酒場YUZU |cafe&bar北浜本店
ドレスコード:「南米」
https://nekomachi-club.com/events/81b0b165cbf0
対面での読書会でしか得られない特別な時間を一緒に過ごしませんか?
会場で皆様と直接お会いし、同じ空間と時間を共有できることを楽しみにしています!
皆様のご参加を、心よりお待ちしております!
■平日夜の読書会、働きながら本を読む会-Re:読書-
こちらもオフラインで平日夜に開催中です。気になった方はこちらから詳細をどうぞ
https://nekomachi-club.com/events/fdeaa535cdab
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2026/11/01 18:31
【開催レポート】関西オフライン読書会(2026年10月24日)

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