皆様、こんにちは!
猫町. U35 BOOK CLUBの運営ボランティアをしている葛城です。

8月30日、村上春樹さんの『夏帆 ―The Tales of KAHO―』を課題本に読書会を開催しました。

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今回集まったのは、村上春樹作品を初めて読んた方から、本作をきっかけに久しぶりに村上作品を手に取った方までさまざま。
『海辺のカフカ』『ノルウェイの森』『1Q84』『ダンス・ダンス・ダンス』など、過去作品の話も交えながら語り合いました。

最初に出てきたのは、「よく分からなかった」「何だったんだろう」という感想。
しゃべる動物が現れたり、現実と異世界の境目が曖昧になったりと、不思議な出来事が次々に起こる一方で、文章そのものは読みやすい。
だからこそ、「読み進められるのに、意味をつかもうとすると急に難しくなる」という本作ならではの感覚がありました。

特に話題になったのが、主人公・夏帆についてです。
夏帆は物語の中心人物でありながら、かなり受け身に見えます。夢や動物たちに導かれながら物語が進んでいくため、
「主人公なのに、あまり主体性や行動力を感じない」という意見も。
一方で、目の前で突拍子もないことが起きても、その世界を比較的すんなり受け入れていく夏帆の姿勢も印象的でした。
そもそも、しゃべる動物が現れたら普通はもっと驚くのではといった話から、
「村上春樹の世界では、非現実的な出来事をいちいち疑わず受け入れることそのものが重要なのかもしれない」という話にも広がりました。

今回かなり盛り上がったのが、作中に登場する動物たちについて。とりわけ、ありくいについてでした。
「どうして、ありくいなんだろう?」 「別の動物でも成立したのでは?」
「何かのメタファーなのか?」と考え始めると、どんどん深みにはまります。
読書会では、しゃべる動物そのものについては「特に違和感なく受け入れた」という人が多かったのも面白いところでした。
一方で、視点を変えてみると、善悪の見え方も変わります。
夏帆の側から見れば味方に思える存在も、シロアリの女王側から見たら本当に「善」なのか。ありくいはただの善良な存在なのか。
「誰が善で、誰が悪なのか」という線引きを考えさせられました。

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物語の後半では、夏帆と母親との関係も大きなテーマになっていきます。
そこから出てきたのが「母親殺し」という言葉でした。
母親から受け継いだ価値観や、娘という立場から離れること。
母親を「自分の母親」としてだけではなく、自分とは別の一人の人間として捉え直すこと。
そう考えると、本作はファンタジーの形を借りた、夏帆の精神的な自立の物語とも読めます。
女性を主人公にした作品であることも含め、「これまでの村上作品とは少し違う家族の描き方なのでは」という話になりました。
一方で、母親の描かれ方については少し引っかかるところも。
母親の欲望や変化をどう捉えるか。母親という役割と、一人の女性としての人生をどう切り分けるのか。
単純に「母親から独立する話」とまとめてしまうには、少し複雑なものが残ります。

人は自分の人生の主人公なのか、それとも運命や宿命に動かされているのかという話にもなりました。
夏帆は自分で選択して進んでいるようにも見えるし、最初から用意された物語の中を進まされているようにも見えます。
これは、先ほど出た「夏帆には主体性がないのでは?」という話ともつながります。
自分で人生を動かすことと、自分ではどうにもできない出来事を受け入れること。
その境界はどこにあるのかと考え始めると、だんだん「ありくいがしゃべる話」どころではなくなってきます。

また、村上春樹の過去の作品を読んだことのある参加者からは、『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』、
『海辺のカフカ』などとの比較も出ました。
現実世界から少しずれた場所へ入り込み、またこちら側へ戻ってくる。説明されないものが説明されないまま残る。
意味がありそうで、意味があるのかどうかも分からないモチーフが登場する。そうした部分には、とても「村上春樹らしさ」を感じます。
一方で、今回の『夏帆』では、これまでの作品以上に家族、とりわけ母娘関係が前面に出ているように感じました。
家族にフォーカスしている作品は珍しいという意見もありました。
「章ごとにそれぞれ独立した物語として読んだ方がいいのでは?」 「すべての伏線やモチーフに意味を求めなくてもいいのでは?」という意見もありました。

確かに、村上作品を読んでいると、ついつい「この動物は何を象徴しているんだろう」「これは伏線なのではないか」と深読みしたくなります。
でも、分からないものを分からないまま受け取る。それも、この作品の楽しみ方なのかもしれません。

むしろ話せば話すほど、「じゃあ、あれは何だったんだろう?」という疑問が増えていきました。
けれど、一人で読んでいたときには「よく分からなかった」で終わっていたところから、他の人の読み方を聞くことで、
母娘関係や主体性、善悪、運命といったさまざまなテーマが見えてきました。

よく分からない本ほど、読書会で話すと面白いということを改めて感じられる一冊でした。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

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https://nekomachi-club.com/events/02e9c569087a

次回のU35 BOOK CLUBの課題本は、夏目漱石『こころ』です。懇親会でも高校の国語の授業で取り扱ったという思い出を話したりしました。
ぜひご参加ください!

レポート:葛城(U35 BOOK CLUB 運営ボランティア)