皆様、こんにちは!
猫町. U35 BOOK CLUBの運営ボランティアをしている葛城です。

2026年7月26日(日)、OSHIROスペースにて、35歳以下限定の読書会「U35 BOOK CLUB」を開催しました。
ランチのために早めに渋谷に着き、駅の構内を出た途端に土砂降りになり、テレビ局のゲリラ豪雨に関する取材なども目撃しながら会場を目指しました。読書会の時間が近づくにつれ、だんだんと晴れ目が見えてきて良かったです。
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渋谷が一望できる会場で読書会を行っています!当日の様子や皆様の感想、読書会の内容をレポートします。

今回の課題本は、フランツ・カフカ『変身』。ある朝、営業マンである主人公グレゴールが夢から目を覚ますと、自分が巨大な虫になっていたという、衝撃的な冒頭で知られる作品です。11名の方にご参加いただき、二つのグループに分かれました。
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どの読書会も、皆様の読書経験はさまざまです。「昔(学生時代、コロナ禍)に読んだことがある」という方もいれば、「今回の読書会をきっかけに初めて読んだ」という方や、別の翻訳で再読した方、ドイツ語の原書を学生時代に読んでいた方など、それぞれの距離感から感想を語り合いました。単なる不条理文学という捉え方に留まらず、多角的な視点で深い議論が飛び交う、非常に濃密であっという間の時間となりました。

100ページちょっとの短い作品でありながら、読み終えた後にずっしりと残るものがあるのが『変身』の不思議なところです。今回の読書会でも、「虫とは何だったのか」「家族はなぜ変わっていったのか」「働けなくなることは、人の価値を変えてしまうのか」など、さまざまな話題が出ました。
作品について語り合った中から、印象的だった話題をいくつかご紹介します。

1. グレゴールはどんな虫だったのか?
まず盛り上がったのは、やはり「グレゴールはどんな虫だったのか?」という話題です。
ゴキブリのようなイメージで読んだ方もいれば、カブトムシのような硬い甲虫を思い浮かべた方もいました。翻訳や挿絵、これまで触れてきた虫に対するイメージによって、それぞれの中に浮かぶ「虫」の姿は少しずつ違っていたようです。
ただ、話していくうちに、「姿だけが虫になったのか、それとも精神まで変わっていたのか」という問いにも広がっていきました。
グレゴールは虫になってしまった後も、家族のことを心配し、仕事のことを考え、自分が家族の生活を支えられなくなったことを気にかけています。見た目は完全に人間ではなくなってしまったのに、内面には人間らしい感情が残っている。そのアンバランスさが、読んでいてとても切なく感じられます。
一方で、味覚や聴覚、好みの変化など、少しずつ「虫としての感覚」に近づいていくような描写もあります。妹のヴァイオリンに心を動かされる場面や、扱いが悪いことへの怒りなどは、虫になってもなお残っている人間らしさとして印象的でした。

2. 働けなくなったとき、人はどう見られるのか
今回の読書会で特に多く話題に上がったのは、病気や事故などで突然働けなくなったとき、人は家族や社会の中でどう扱われるのか、ということでした。
グレゴールは、家族の生活を支えるために働いていました。自分一人で家計を背負い、その役割が彼自身のアイデンティティにもなっていたように見えます。
しかし、虫になって働けなくなった瞬間、その関係性は大きく変わっていきます。
最初は心配していた家族も、次第に疲れ、負担を感じ、グレゴールを「家族の一員」としてではなく、「世話をしなければならない存在」として見るようになっていきます。
ここから、介護する側の視点や、家族の責任、介護疲れ、共依存の関係についても話が広がりました。
もし自分や家族が突然働けなくなったらどうなるのか。
誰かを支えることは、どこまでが愛情で、どこからが負担になるのか。
そして、人の価値は「働けること」や「役に立つこと」と結びついてしまうのか。
『変身』は非現実的な設定の物語ですが、そこで描かれている問題は、現代の私たちにとってもかなり切実なものだと感じました。

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3. 家族の愛情には限界があるのか
『変身』を読んでいて苦しくなるのは、家族が最初から冷たい人たちとして描かれているわけではないところです。
はじめは驚き、戸惑いながらも、家族はグレゴールの存在を受け止めようとします。妹も食事を運び、部屋の世話をしようとします。
けれど時間が経つにつれて、家族の態度は少しずつ変わっていきます。グレゴールが働けなくなったことで、それまで隠れていた家族の力関係や依存関係があらわになっていくようにも見えます。
父親の存在感、母親の戸惑い、妹の変化。
一人称ではなく、三人称の語りで描かれているからこそ、グレゴール本人だけでなく、家族全体の変化も見えてきます。
「家族だから支えられる」は、たしかに理想としては美しいものです。
でも、現実には家族にも生活があり、感情があり、限界があります。
家族愛や人間愛はどこまで続くのか。
支える側が疲れてしまったとき、関係性はどう変わってしまうのか。
今回の読書会では、そうした少し重たいテーマについても、参加者の皆さんと率直に話すことができました。

4. 家父長制、資本主義、世間体
『変身』には、家族の物語であると同時に、社会の物語として読める部分も多くあります。
グレゴールは家族を養う存在でしたが、働けなくなった途端に、家の中での立場を失っていきます。そこには、家父長制や資本主義の中で、「稼ぐこと」「役に立つこと」が人の価値と結びつけられてしまう怖さがあります。
また、家のドアの開け閉めや、下宿人の存在、世間体を気にする様子などからは、家族の内側だけでは完結しない、外からの視線も感じられます。
家の中の問題でありながら、常に社会の目が入り込んでくる。
その息苦しさも、この作品の出口のなさにつながっているのかもしれません。

5. 最後に残る、なんとも言えない切なさ
読書会の中では、ラストについても多くの感想が出ました。
グレゴールがいなくなったあと、家族はどこか解放されたようにも見えます。その描写に、救いを感じる人もいれば、残酷さを感じる人もいました。
「救われない話だった」という声もありました。
たしかに、グレゴール本人にとっては、最後まで明るい出口が見えない物語だったように思います。
一方で、家族の側から見ると、重たい荷物を下ろしたような空気もあります。そこがまた、簡単に「ひどい家族」とは言い切れない難しさでもあります。
家族にとってグレゴールは、愛する存在だったのか。
それとも、いつの間にか負担そのものになってしまっていたのか。
また、実はグレゴールの家は裕福だったのではないか、妹のヴァイオリンは兄であるグレゴールが考えているほど上手ではなかったのではないか、グレゴールの思い込みと、家族の実態には解離があったのではという意見もありました。
読み終わったあとに、すっきりしない問いが残ります。
でも、そのすっきりしなさこそが、『変身』という作品の強さなのかもしれません。

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『変身』は、短い作品でありながら、さまざまなテーマを含む一冊でした。
虫になるという非現実的な出来事から始まる物語なのに、話していくうちに、病気、事故、介護、家族、仕事、世間体、そして「人は何によって人として扱われるのか」という、とても現実的な問いへとつながっていきました。
一人で読んでいると、ただ不条理で暗い物語として受け止めてしまうかもしれません。けれど、読書会でほかの人の感想を聞くことで、作品の中にある家族の視点や社会の視点にも気づくことができました。





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ご参加くださった皆様、ありがとうございました!
本を通して同世代の人たちと、フラットに、そして深く語り合えるのが「U35 BOOK CLUB」の魅力です。

次回は8月30日(日)開催で、村上春樹『夏帆─The Tale of KAHO─』が課題本となっています。(私にとって初めて読む村上春樹の作品です!)

ぜひお気軽にご参加ください!

https://nekomachi-club.com/events/ab934434654e

レポート:葛城(U35 BOOK CLUB 運営ボランティア)